「窃盗」による検挙総数は年々減少しているが・・・
貧しい高齢者が増えている現状は、生活保護受給者の増加という形でも示されています。厚生労働省の「生活保護の被保護者調査」によれば、2015年度末の生活保護受給世帯数は163.5万世帯。このうち高齢者世帯は82.7万世帯で、半数以上を占めます。
また、2014年度末時点で生活保護を受けていた高齢者世帯は、74.4万世帯。たったの2年間で、11%も増えています。
経済的に追い込まれ、罪を犯してしまう高齢者も少なくありません。法務省の「平成27年版犯罪白書」によれば、1994年当時、窃盗による検挙総数は16・5万人でした。これに対し、2014年には13.1万人と10年間で2割ほど減っています。
ところが、高齢者の窃盗による検挙数は急激に増えているのです。1994年の高齢者窃盗検挙数は7500人程度でしたが、2014年には3万4500人にまでふくれあがりました。さらに、一般刑法犯として検挙された人のうち、万引きで検挙された人は全体の31.8%にすぎません。
ところが検挙された高齢者女性の場合、82.7%が万引きで検挙されています。高齢者女性の貧困率が高いことと考え合わせると、日々の暮らしに困り、つい万引きに走ってしまった姿が浮かんできます。
「税金」でまかなわれている受刑者にかかるコスト
このように高齢者が罪を犯してしまう背景には「生活保護を受けるのは恥ずかしいことだ」「自分が生活保護を受けられると思わなかった」などという生活保護に対する誤解や思い込みが多いことにあります。
それゆえ、一度服役をした高齢者が、帰る場所がないため出所後すぐに再犯を行い、刑務所に戻ってくるケースも珍しくありません。高齢者にとって社会福祉サービスを利用するよりも、刑務はあるものの衣食住が保障された刑務所の方が居心地がいいと思われているという問題があり、「福祉の敗北」ともいわれています。
ただし、受刑者1人当たりにかかる300万円のコストは税金でまかなわれていますので、私たちにとって無関係な問題ではないのです。
【図表1】 高齢者の検挙人員の推移(窃盗)
【図表2】 高齢者の検挙人員の罪名別構成比(男女別)