(※写真はイメージです/PIXTA)

総務省『家計調査(2024年)』によると、世帯主が50~59歳の二人以上世帯では、月の消費支出が平均約35万7,000円にのぼり、可処分所得は約56万9,000円。そこから税金や社会保険料などの非消費支出として約14万1,000円が差し引かれています。持ち家率は85.3%と高いものの、住宅ローンや教育費、保険料といった支出が重なることで、「収入はあっても余裕を感じにくい」家計が少なくありません。老後が現実味を帯びてくるこの時期に、初めて家計の全体像と向き合い、その“実像”に直面する人もいるのです。

「小遣い3万円」で働き続けてきた58歳

「俺は、誰のために働いてきたんだろうって……」

 

そう語るのは、都内近郊に住む会社員の中村浩一さん(仮名・58歳)。メーカー系企業に勤め、年収は約780万円。決して低い水準ではありませんが、月の小遣いは3万円に抑えられてきました。

 

「若い頃は、そんなものだと思っていました。家を買って、子どもを育てていくには仕方ないって」

 

妻は専業主婦として家計を管理。中村さんは「任せた方がうまく回る」と、詳細を深く確認することはありませんでした。

 

転機が訪れたのは、会社で早期退職制度の説明会が開かれたときでした。

 

「65歳まで働くつもりでしたが、ふと『老後の資金はいくらあるんだろう』と気になったんです」

 

帰宅後、思い切って家計の状況を尋ねました。すると、妻から示されたのは、住宅ローンの残高、子どもの学費、積立型保険、そして老後資金の見通しでした。

 

「正直、愕然としました。貯蓄はあるけど、思っていたほど余裕がない。しかも、これからも支出は続く」

 

住宅ローンはまだ10年以上残り、私立大学に通う子どもの学費も重なっていました。

 

「家族のために働いてきたのは事実です。でも、その“家族のため”が、いつの間にか自分の将来を削っていた気がして……」

 

中村さんの言葉には、怒りよりも虚しさがにじみます。

 

一方で、妻もまた「家計を守る役割」を一人で背負い、余裕のなさを感じていたと言います。

 

「教育費と老後、どちらも心配でした。だから、使えるお金はできるだけ抑えてきたんです」

 

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