「夫婦でゆっくり温泉へ」…退職祝いに選んだ贅沢旅行
「定年退職したら、まずは夫婦で温泉に行こう」
そんな約束をずっと胸に秘めていたという、東京都在住の元会社員・村井俊一さん(仮名・65歳)。設備関連のメーカーに40年間勤め上げ、無事に定年を迎えた今年の春、彼は退職金2,500万円を手にしました。
「贅沢すぎるかな、と思いつつ、退職祝いだしね。ちょっと高級な旅館を予約して、露天風呂付きの部屋にしました。これから夫婦でのんびり、第二の人生を歩んでいこうって…心からそう思っていました」
旅先に選んだのは、かつて新婚旅行で訪れた箱根の温泉地。桜が満開の季節で、露天風呂からの景色はまるで絵のようだったといいます。
「妻もすごくうれしそうで、夕食も『おいしいね』『懐かしいね』って言いながら笑ってくれていて…。まさに“人生で一番幸せな時間”だったと思います」
ところが、その幸せな時間は、ある一言で一変しました。
食後に部屋でくつろいでいたときのこと。妻がぽつりと、こんな言葉を漏らしました。
「ねえ、あなたはこれから、毎日ずっと家にいるのよね?」
何気ない一言に聞こえたかもしれません。けれど、そのあとの言葉が、村井さんの胸に突き刺さります。
「正直、ちょっと息が詰まりそう。もう少し“距離”をとったほうが、私たち、うまくいく気がするの」
まさかの“別居”の提案でした。
村井さんは「まったく予想していなかった」といいます。
「妻は専業主婦で、ずっと家庭を支えてくれていた。だからこそ、これからは一緒に旅行したり、のんびり暮らしたりする時間を楽しもうと思っていたんです。でも、妻からすると、長年“夫が仕事に行っている日中”が、自分にとって大切な時間だったみたいで…」
このような“定年後の夫婦関係の変化”は、珍しいことではありません。厚生労働省『令和6年 人口動態統計月報年計』によれば、2024年に離婚した夫婦のうち、婚姻継続期間が20年以上の割合は約22%にのぼります。
