(※写真はイメージです/PIXTA)

生活に不自由しないだけの資金があれば、セカンドライフは豊かで自由なものになるように思えます。金融広報中央委員会『家計の金融行動に関する世論調査(2023年)』によると、60代単身世帯の金融資産の中央値は210万円であり、数千万円を保有する世帯は“勝ち組”とも言える存在です。しかし、どれだけ余裕があっても、「計画なき出費」や「使いすぎ」が将来の不安を呼び寄せてしまうこともあります。

「もう旅行はやめよう」…待っていたのは“思いがけない孤独”

使いすぎに気づいた石田さんは、すぐに支出を見直し、旅行をやめ、日常生活をコンパクトに変えようと決めました。

 

「週に3回は外食していたけれど、それもやめました。海外旅行は控えることにして、移動は電車とバス中心。年金の範囲で暮らせるよう切り替えました」

 

その結果、生活費は月18万円ほどに抑えられ、残りの資産でしばらくは安心して暮らせる見込みになったといいます。しかし、その後に石田さんを襲ったのは「想定外の孤独」でした。

 

「旅行に夢中になっていた間、友人との交流はどんどん減っていました。いざ日常に戻ると、連絡する相手もあまりいない。SNSに写真をアップして“いいね”はもらえても、リアルな会話がまったくない。どこか空虚だったんです」

 

石田さんはその後、地域のボランティア活動や趣味サークルに参加し、少しずつ「お金を使わない豊かさ」を実感していると語ります。

 

「お金があることはもちろん大切です。でも、“安心して老後を楽しむための使い方”をもっと考えるべきでした。いちばん贅沢だったのは、話し相手がいる時間かもしれませんね」

 

あれだけ資産に余裕があった石田さんが、今こうして慎ましい生活のなかで「満たされている」と感じられるようになったのは、きっとそのギャップの大きさゆえでしょう。

 

「旅行に後悔はありません。あの景色は今でも忘れられません。でも、これからは“いっしょに思い出を語り合える誰か”と過ごす時間を大事にしたいですね」

 

老後資金は、ただの「安心材料」ではなく、「人生の選択肢」を支える基盤です。豊かに使うも、慎ましく使うも、その選択にこそ“その人らしさ”が表れるのかもしれません。

 

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