「戻りたい」と思っても、簡単には戻れない
移住から2年が経った頃、夫婦は東京近郊への“戻り”を考え始めました。しかし、ここで新たな壁に直面します。
「古民家は、買うときは比較的スムーズでしたが、売るとなると話が違いました。問い合わせはあっても、立地や設備面で敬遠されてしまって…」(浩一さん)
一定のリフォーム費用もかかっており、簡単に手放せる状況ではありません。賃貸に出すことも検討しましたが、借り手探しは難航しています。
地方では空き家の増加が社会問題となっており、立地や築年数によっては、活用や売却が容易でないケースも少なくありません。「住み替えの自由度が低い」という現実は、移住前にはあまり意識していなかった点でした。
現在、松永さん夫婦は古民家に住み続けながら、将来の選択肢を模索しています。
「地方暮らしそのものが悪かったとは思いません。ただ、もっと現実的な視点で準備すべきだった。住んでみないと分からないことが、あまりにも多かったですね」(浩一さん)
地方移住は、人生を豊かにする可能性を秘めています。しかしそれは、「生活インフラ」「医療へのアクセス」「人付き合い」「将来の住み替えのしやすさ」といった現実的な条件を冷静に見極めた上でこそ、成り立つものです。
憧れだけで踏み出すのではなく、「もし合わなかったらどうするか」まで含めて考えておくこと。それが、後悔しない移住への第一歩なのかもしれません。
