強まる「父の頑固さ」の正体
それは、父が体調を崩して入院したときでした。病院からの電話で駆け付けた山本さんが医師から告げられたのは、軽度ながら認知機能の低下が見られるという説明でした。
すぐに生活が破綻する段階ではないものの、不安感や被害意識が強まり、お金や所有物への執着が強くなることがある――そんな話も添えられていました。
異様な警戒心。金への過度な執着。善意を疑う態度。しかし、父はもともと頑固な性格でした。そのため、こうした変化を「年を取って、ますます頑固になっただけ」と受け止めてしまい、認知症の兆候だとは考えもしなかったのです。
「もっと早く気づけていれば、酷いことを言わずに済んだ。申し訳なかった」 そう山本さんは振り返ります。
山本さんがたどり着いた「いまの正解」
現在も父は自宅で一人暮らしを続けています。「できるところまでは自分でなんとかする」――これが父の意思でした。一方で山本さんは、父を見る目が変わったといいます。以前は、「お金ばかり持っていても、孤独で幸せな老後とはいえない」と感じていました。しかし今は、そう単純ではないと考えるようになりました。
「こちらの価値観で『孤独でかわいそう』と決めつけるのは違うんですね。それに、お金があることが支えになっているなら、それを気にしすぎる必要もない。そのうえで、『自分は父のお金をあてにしていない』と改めて伝えました」
すると父は、ぽつりとこう言ったそうです。
「最終的には、お前に全部渡るんだ。こっちはこっちで考えているから」
その言葉を聞き、山本さんは「あれこれ構わず、見守ることがいまの正解なのだ」と思うようになりました。
高齢になると、「失うこと」への恐怖は強くなります。そこに認知機能の変化が重なれば、「金だけは守らなければならない」という思考に縛られてしまうことも。 それを家族が「性格の問題」「頑固なだけ」と受け止めると、場合によっては関係が破綻することもありえます。
山本さんはいま、父との関係を少しずつ修復しようとしています。無理に分かり合おうとせず、否定もせず、急がせない。父を尊重しながら、「誰かが気にかけている」という実感だけは失わせないよう心がけています。
「入院後は父も少しだけ和らぎました。定期的に電話をするくらいならいい、と言ってくれたので」
最後に人を支えるのは、資産の額ではなく細くても切れない“つながり”なのかもしれない。山本さんは、父との関係を通して、いまもその答えを探し続けています。
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