10年間、送り続けた〈月4万5,000円〉
「仕送りをやめる理由がありませんでした」
そう語るのは、東京都内に暮らす会社員の佐藤健一さん(仮名・55歳)。父・正男さん(仮名)は、地方都市で一人暮らしをしていました。
「母が亡くなったあと、父は年金が月10万円ほどしかなくて。『生活が苦しい』とは言わなかったけれど、放っておけなかった」
健一さんは、10年前から毎月4万5,000円の仕送りを続けてきました。家計に余裕があったわけではありませんが、「親の生活が安定するなら」と、半ば当然のこととして続けてきたといいます。
そんな父から、ある日届いたLINEが、最後のやり取りになりました。
「ありがとう。もう十分だ」
「いつもと同じ、短い文章でした。体調が悪いとも、困っているとも書いていなかった。それが、逆に心に残っています」
数日後、正男さんは自宅で倒れ、そのまま帰らぬ人となりました。
葬儀を終え、健一さんは実家の遺品整理に取りかかりました。そこで目にしたのは、几帳面に記帳された通帳と、封筒にまとめられた現金でした。
「正直、驚きました。仕送りを続けてきたのに、思っていたよりお金が減っていなかったんです」
通帳を見ると、仕送り分はほとんど手つかずの月も多く、生活費として引き出されている形跡は限定的でした。
さらに、家計簿のようなメモが見つかります。そこには、「電気は最低限」「病院は月1回まで」「デイサービスは断った」といった走り書きが残されていました。
「父は、仕送りを“使うため”ではなく、“安心のため”に置いていたんだと、初めて分かりました」
