大谷翔平・山本由伸の活躍が、実は「2025年米国のGDP」まで押し上げていたワケ【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】

景気の予告信号灯としての身近なデータ(2025年12月29日)

大谷翔平・山本由伸の活躍が、実は「2025年米国のGDP」まで押し上げていたワケ【解説:エコノミスト宅森昭吉氏】
(※画像はイメージです/PIXTA)

消費者のマインドが上向けば、モノが売れ、企業の業績が上がり、株価やGDPに反映される――。 そのマインドを強力に押し上げる引き金が、多くのファンを抱える「人気球団の優勝」だったとしたら? 2025年に日米で同時に発生した「タイガース優勝」と「ドジャース連覇」。この二つの熱狂が経済指標に残した、驚くべき足跡を検証します。エコノミストの宅森昭吉氏の解説をみていきましょう。

藤川阪神の史上最速Vとリンクする「日経平均+20%台」の上昇

2025年セ・リーグ優勝は阪神タイガース。日銀短観12月調査・大企業・全産業・業況判断DIの前年差は+1と改善傾向維持。

 

2025年の阪神タイガースは、藤川球児監督の1年目のシーズンでした。9月7日に甲子園での対広島23回戦に勝利。2年ぶり通算11度目、セ・リーグで7度目の優勝を決めました。1990年の巨人の9月8日を抜いて、史上最速の優勝を更新しています。

 

2025年のセ・リーグMVP選ばれた佐藤輝明選手の活躍が、阪神優勝の原動力の一つに。佐藤選手は40本塁打、102打点をマークし、本塁打と打点の2冠に輝きました。阪神で同タイトルの2冠は1986年のバース(三冠王)以来39年ぶり5人目(7度目)です。

 

阪神タイガースは10月17日に甲子園でのクライマックスシリーズ・ファイナルステージ第3戦、対DeNA戦に勝利。アドバンテージの1勝含む4勝0敗で球団3度目のCS制覇を果たし、2年ぶりの日本シリーズ出場を決めました。しかし阪神は、10月30日に甲子園での日本シリーズ第5戦に敗れ、ソフトバンクに1勝4敗で敗退し、日本一にはなれませんでした。

 

なお2025年は、メジャーリーグのチームと東京ドームでプレ・シーズンマッチを行い、3月15日にシカゴ・カブス、3月16日にロサンゼルス・ドジャースに連勝しています。

 

企業マインド・株価動向の連動性

1978年以降の日銀短観・大企業・全産業・業況判断DIのシーズンが終わった直後の調査である12月調査の前年差を、人気球団の巨人、阪神の2チームのセ・リーグ優勝年とほかの4球団のセ・リーグ優勝年とをわけてみると、違いがみられます。なお、業況判断DIの前年差をみるのは、日銀短観の業況判断DIが「良い」−「悪い」で求める水準の調査だからです。

 

53年間の大企業・全産業・業況判断DIの平均は0.0。巨人が優勝したときの21回の前年差の平均は+5.5ポイントの改善になります。阪神が優勝した2025年を含めた5回の前年差の平均は+2.8ポイントの改善です。ほかの4チームが優勝したときの27回の前年差の平均は▲4.7ポイントの悪化になります。阪神が日本一にはなれなかった2025年12月は大企業・全産業・業況判断DIは、+24で2024年12月の+23から1ポイントに留まりましたが、しっかり改善しました。

 

出所:日本銀行等
[図表1]過去53年の日銀短観・大企業・全産業・業況判断DIの変化幅(12月調査の前年差)と巨人・阪神の優勝 出所:日本銀行等

(注)96年までは11月調査

※〇改善回数、△横這い回数、●悪化回数

 

2025年の日経平均株価(12月26日終値時点)前年末比で+27.2%と2ケタの上昇になりました。2年前の優勝年の2023年の+28.2%と同程度の20%台の高い上昇率です。これで、7回のセ・リーグ優勝の平均上昇率は+18.9%、過去60年間(1966年以降で5回)のセ・リーグ優勝の平均の上昇率は+26.7%まで高まっています。

 

阪神がセ・リーグ優勝すると日経平均株価が上昇するという過去60年間での関係は2025年(12月26日終値時点)も成立しました。 

 

出所:各種資料
[図表2]阪神、セ・リーグ優勝年と日経平均株価 出所:各種資料

大谷・山本の活躍で球団史上初「観客400万人」…快進撃とリンクする米景気の回復

MLBでも人気球団のロサンゼルス・ドジャースが優勝、2025年実質GDPの上振れ要因になった可能性も。

 

2025年は、ロサンゼルス・ドジャースにとって球団創設以来141年目のシーズン、ロサンゼルス・ドジャーススタジアムでは63年目のシーズンでした。

 

2025年開幕は3月18日と3月19日に、日本の東京ドームでのシカゴ・カブスとの2連戦。ドジャースの山本由伸投手とカブスの今永昇太投手が開幕戦に先発し、MLBで初めての日本選手同士による開幕戦での対決になりました。ドジャースは開幕戦から勝利を重ね、前年にワールドシリーズを制した球団としては、史上最長の開幕8連勝を記録。

 

本拠地最終戦のサンフランシスコ・ジャイアンツ戦の9月21日(現地時間)には、ドジャースの公式Xで「シーズンの最終ホームゲームで、ドジャースはフランチャイズ史上初めて観客動員数が400万人を超えました。ドジャースは2025年のレギュラーシーズンを総観客数401万2,470人で終え、1試合平均4万9,537人のファンが訪れました」と発表しています。9月28日に、93勝69敗で地区優勝のシーズンを終了しました。

 

大谷翔平選手の2025年シーズンの打撃成績は158試合、727打席、611打数、172安打、打率.282、55本塁打、102打点、109四球、20盗塁。投手成績は14登板、1勝1敗、防御率2.87、62奪三振でした。この結果により、ナリーグMVPを満票で受賞しています。

 

ドジャースは、リーグ優勝の勝率がナリーグ3地区のなかで一番低かったので、ポストシーズンではシンシナティ・レッズとのワイルドカードシリーズを戦い、10月1日に2勝0敗で突破しました。フィラデルフィア・フィリーズとのディビジョンシリーズは10月9日に3勝1敗で勝ち抜いています。リーグチャンピオンシップシリーズで、ミルウォーキー・ブルワーズを4勝0敗で破り、ナリーグ優勝を果たしました。

 

大谷翔平選手は10月17日の第4戦に1番・投手兼指名打者の二刀流で先発出場。初回に先頭打者ホームラン、4回の第3打席で再びソロ、7回の4打席目にダメ押しソロと驚異のホームラン3発、投げては7回途中まで2安打3四球無失点、10奪三振を奪う圧巻の投球内容でした。大谷選手はこのシリーズのMVPに選ばれました。

 

トロント・ブルージェイズとのワールドシリーズは、11月1日の第7戦までもつれたものの、ドジャースが4勝3敗で勝利。球団史上初のワールドシリーズ連覇を達成しています。

 

ブルージェイズとの激闘を5対4で制した第7戦の試合終了時にドジャースのマウンドに立っていたのは、第6戦でも先発して、中0日で登板した山本由伸投手です。延長11回、山本投手は最後の2回3分の2を投げ、ワールドシリーズ3勝目を挙げました。第2戦を完投し、第6戦でも6回を投げているのです。第7戦での貢献を加えると、シリーズ通算で17回3分の2を投げ、許した得点は2点のみ。第2戦の完投から2日後に、山本投手は第3戦の延長19回に備え、ブルペンで準備をしていたことも話題になりました。山本投手はシリーズMVPに選ばれています。

 

1961年から2024年の64年間の実質GDP成長率の平均は+3.03%ですが、人気球団のドジャースがリーグ優勝年の実質GDP成長率の平均値は+3.33%で平均を上回っています。人気球団の優勝は景気にプラスに働く傾向があるようです。 

 

出所:米国商務省等
[図表3]1961年~2024年のMLBの各リーグ優勝チームと、実質GDP成長率との関係 出所:米国商務省等

(注)経済成長率・計・平均の63回には94年(ストライキで中止)を含む。

*1961年~2024年の期間ヤンキースは7回ワールドシリーズ制覇。平均成長率+3.71%。

*1961年~2024年の期間ドジャースは6回ワールドシリーズ制覇。平均成長率+3.03%。

※2024年、アリーグ優勝はヤンキース。ナリーグはドジャース。ワールドチャンビオンはドジャース。

※2025年、アリーグ優勝はブルージェイズ。ナリーグ優勝はドジャース。

 

2025年実質GDPは1%台予測から上方修正へ

2025年の実質GDP実績見込みは、前期比年率▲0.6%のマイナス成長になったことを受けて、低いものになりました。最初の四半期の1~3月期がトランプ大統領の相互関税発動前の駆け込み輸入の影響もあったようです。日本経済研究センターがまとめている日本のエコノミストのコンセンサス調査である「ESPフォーキャスト調査」5月調査での、2025年米国の実質GDP前年比予測の平均値は+1.43%と低いものでした。

 

しかし、ドジャースの優勝へ向けての歩みが功を奏したのでしょうか、4~6月期は前期比年率+3.8%、7~9月期も同+4.3%と堅調な成長率に。ナウキャスト予測で10~12月期の予測値をみると、12月23日現在のアトランタ連銀のGDPNOWでは前期比年率+3.0%が見込まれています。また、12月26日現在のNY連銀のStaff Nowcastでは同+2.17%とこちらもしっかりした伸び率です。成長率で10~12月期を延長すると、2025年の実質GDPは各々+2.3%、+2.2%になります。年央時点の1%台の予測に比べだいぶ上方修正になると見込まれます。

 

出所:アトランタ連銀、NY連銀
[図表4]GDPナウ(米国2025年10-12月期実質GDP成長率予測)(前年比年率:%) 出所:アトランタ連銀、NY連銀

 

出所:米国商務省
[図表5]実質GDP(前年比年率:%) 出所:米国商務省

 

※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。

 

 

宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)

三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。

 

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