現状DIは48.9へ急回復も、先行きDIを押し下げた「イラン攻撃」
2月の「景気ウォッチャー調査」の現状判断DI(季節調整値)は、前月差1.3ポイント上昇の48.9と、4ヵ月ぶりの上昇になりました。48.9は24年4月以来、22ヵ月ぶりの高い水準です。
2月の現状水準判断DI(季節調整値)は前月差0.5ポイント上昇の47.5。2ヵ月連続の上昇で25年1月以来、13ヵ月ぶりの水準です。そのうち、2月の製造業の現状水準判断DIは前月差0.5ポイント上昇の48.9で、前月差1.7ポイント上昇、3ヵ月連続上昇しています。2月の製造工業生産予測指数と変化の方向が逆になっています。
2月の先行き判断DI(季節調整値)は前月差0.1ポイント低下の50.0でした。2月の「景気ウォッチャー調査」の調査期間は2月25日(水)~28日(土)です。調査期間の最終日28日にイスラエルと米国によるイランへの攻撃が行われました。多くの景気ウォッチャーは平日であり27日(金)までに回答したのでしょうが、28日(土)に回答した景気ウォッチャーのなかには、イラン情勢に関し早速コメントした人が現れました。
1月にゼロだった「イラン」や「中東」に関するコメントした景気ウォッチャーは、2月では各々4人、6人です。なお「イスラエル」に関するコメントは2月もゼロ。「イラン」先行き判断DI25.0、「中東」先行き判断DI33.3でした。少ないコメント数ですが、合わせると0.1ポイントの低下寄与度となります。イランの問題がなければ、2月の先行き判断DIは50.1の横這いだったでしょう。「景気ウォッチャー調査」は速報性に優れていることがわかります。
「米国とイランの関係によって旅行業界に大きな影響が出る。今後、争いが起これば景気は確実に悪化する」という九州の旅行代理店・統括者は「悪くなる」と回答しました。また、「中東情勢の問題で、樹脂容器や物流費等の価格高騰が懸念される」という甲信越の化学工業・営業担当も「悪くなる」と回答しました。3月調査で景況感がどれだけ悪化するかどうか、予断をもつことなく「イラン情勢」の行方を注視したいところです。
なお、原数値でみると、現状判断DIは前月差2.8ポイント上昇の48.2となり、先行き判断DIは前月差1.2ポイント上昇の51.8となりました。
2月の調査結果に示された景気ウォッチャーの見方に関する内閣府の判断は、1月の「景気は、天候要因の影響がみられるが、持ち直している」から「景気は、持ち直している」に変わりました。また、先行きについては、5ヵ月連続で「価格上昇の影響等を懸念しつつも、持ち直しが続くとみられる」になりました。
百貨店・レジャーなど複数業種が「分岐点50」超えへ
2月の業種ごとの現状判断DI(原数値)をみると、景気判断の分岐点50を上回る業種が百貨店(51.6)、乗用車・自動車備品販売店(52.0)、通信会社(53.2)、レジャー施設関連(53.1)と複数出てきました。1月調査で唯一52.5と50超だった家電量販店は49.4で50割れになりました。
「年末商戦以降、3G通信サービスの終了に伴う、機種変更への対応に向けて、店舗では高い目標に向けて奮闘している。新料金プランの導入やイベント強化などの販売促進策が充実していることもあって、他社からの乗換えや店舗外での販売イベントは好調に推移している。ただし、人材不足や一部商品の在庫不足が課題となっているほか、目標達成へのプレッシャーが現場の負担増につながっている」という北海道の通信会社・企画担当のコメントがありました。
沖縄、先行きDIは驚異の54ヵ月連続50超え。現状DIも高水準をキープ
地域別にみた2月の現状判断DIでは、沖縄が55.9と1月の55.5から上昇し、11ヵ月連続で景気判断の分岐点50を上回りました。関東のなかに含まれる東京都が52.8で、1月の50.7から上昇し2ヵ月連続50超に。また、2月では北陸(53.7)、四国(50.7)が50超になったものの、その他の地域は50割れです。
先行き判断DIでは、沖縄が61.8。1月から4.5ポイント上昇し25年10月の60.2以来の60台になりました。21年9月以降54ヵ月連続50超が続いています。
衆院選の与党大勝で「経済対策」への期待高まる
2月8日に投開票が行われた衆議院選挙の結果、総定数465議席のうち与党の自民党が316議席、日本維新の会が36議席を獲得しました。
「衆議院選挙の影響もあって、来客数がやや少なくなっている」という北海道のスナック経営者の「やや悪くなった」というコメントに代表されるように、衆議院選挙が行われることにより悪影響を受ける業種があります。そのため、2月の「衆議院選挙」関連現状判断DIは45.5と50割れになりましたが、「衆議院選挙」関連先行き判断DIは58.6と50を上回りました。
「衆議院選挙の結果により、現政権の経済対策の実行が想定される」という四国の電気機械器具製造業・経理のコメントに代表される経済政策実施期待が景況感を押し上げています。
また、2月「政治」関連現状判断DIは58.3、先行き判断DIは62.5とどちらも50超に上昇。24年10月の衆議院選挙で与党が過半数割れとなったときには先行き判断DIが38.5と、低かったことと様変わりです。
「大雪」のマイナス影響が緩和…2月の気温関連現状DIは11月以来の50超え
2月の「気温」関連現状判断DIは51.6と11月の60.2以来の、判断の分岐点50超になりました。1月の「大雪」関連現状判断DIは30.2となり、景況感の足を引っ張りましたが、2月は43.2まで改善していることも「気温」関連現状判断DIの改善につながったとみられます。
内閣府の判断で、1月の「景気は、天候要因の影響がみられるが、持ち直している」から、2月は「景気は、持ち直している」と、「天候要因の影響がみられるが」が削除されたことと整合的です。
「中国」渡航自粛の動揺は収束へ…インバウンド先行きDIは55.0に改善し、楽観的な見方が拡大
2月の「外国人orインバウンド」関連現状判断DIは49.5と、3ヵ月連続の50割れでしたが、1月の45.7から1.8ポイント改善しました。
一方、2月の先行き判断DIは55.0で1月の52.7から2.3ポイント改善。3ヵ月連続の上昇です。インバウンド全体でみると、それほどひどいことにはならないという見方が増えているのでしょう。
コメント数は10月の42人から11月は120人に急増しましたが、12月は68人に低下。1月73人、2月は60人でした。「中国経済の先行きが不透明であることから、かつてのような爆買いは期待しづらい状況である。しかし、日本人客による購買が好調で、多様化したインバウンド需要も定着しているため、今後数ヵ月は高い売上水準を維持できるとみている。春の観光シーズンに向け、日本人向けの品ぞろえを強化することで、安定した推移を見込んでいる」という北陸の商店街・代表者のコメントがありました。
「中国」関連判断DIは、中国からの渡航自粛要請が出た月の25年11月では先行き判断DIが39.2で、コメントしたウォッチャーが125人へと急増しました。12月以降は、先行き判断DIが上昇傾向、コメントしたウォッチャーが減少傾向にあります。26年2月のDIは現状43.5、先行きは49.4とそれぞれ2ヵ月連続、3ヵ月連続で上昇しています。
ガソリン「暫定税率廃止」が景況感を底上げ…物価高の一服感で「価格」DIも大幅改善
2月の「価格or物価」関連判断DIは、現状が46.3で1月の39.7から上昇。また、先行き判断DIは45.2でこちらも1月の44.1から上昇しました。依然50割れで景況感の足を引っ張っているものの、2月まではかなりの範囲で物価が高水準ながら落ち着いてきたことが「価格or物価」関連判断DIの改善につながったと思われます。
ガソリン暫定税率(25.1円/L)は2025年12月31日に正式に廃止されました。2月の「ガソリン」関連DIは現状55.6、先行き58.9でどちらも50超になり、景況感の押し上げ要因になりました。
ミラノ五輪「最多メダル」特需でDI上昇、節約とイベント消費の「2極化」が鮮明に
ミラノ・コルティナ冬季オリンピックで日本は金5個、銀7個、銅12個、計24個のメダルを獲得しました。冬季オリンピックは夏季のオリンピックよりも関心が低いことも多いのですが、今大会の日本選手の活躍が、景況感の押し上げに寄与したようです。「オリンピック」関連現状判断DIは52.3、先行き判断DIは62.5になりました。
「物価上昇が続いているが、賃上げが追い付いていないため、定番の家庭用品の店頭売上はリピート注文の減少により、前年比で90%以下のチェーンストアが散見される。売上の減少を特価販売で補おうとしても、期待したほどの数量が出ず、利益も減少している。一方、ミラノ・コルティナオリンピックやWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)などの特需や、コアなキャラクターの期間限定店舗などでは販売が非常に好調であるなど、消費は明らかに2極化しており、当面はこの傾向が高まる」という近畿のその他非製造業[衣服卸]・経営者のコメントがありました。
先行きの判断で注目されるイベントでは、2月「ゴールデンウイーク」関連先行き判断DIは65.0で35人がコメントしました。「桜」関連のコメントしたのは4人ですが、2月「桜」関連先行き判断DIは62.5になりました。
※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。
宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)
三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。
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