義実家への帰省を拒んだ妻が、夫を黙らせた一言
「正月くらい、実家に顔を出さないと」
毎年、年末が近づくたびにそう切り出してくる夫の言葉に、真紀さん(38歳・仮名)は胸の奥が重くなります。
東京都内で暮らす真紀さん一家は、共働きで小5の息子と小3の娘を育てています。夫(40歳)と合わせた世帯年収は約1,500万円です。
仕事納め後は大掃除や子どもたちの世話に追われ、ようやく一息つけるころに持ち上がるのが、「義実家への帰省」でした。
年金15万円の義両親と、夫の負い目
夫の実家は茨城県にあります。義両親はいずれも70代で、年金は夫婦2人で月15万円ほど。若いころは自営業を営んでいたという義両親。一戸建ての住宅ローンはとっくに完済しているものの、最近の物価高とインフレで決して生活は楽ではありませんでした。それでも、夫を都内の私立大学まで進学させてくれた両親のことを、夫は今も強く気にかけています。
「親には、苦労をかけたから」
その思いがあることは、真紀さんにも分かっていました。義両親は堅実に暮らし、決して贅沢を言う人たちではありません。真紀さん自身も、「立派なご両親だと思う」と感じています。
ただ、帰省を重ねるうちに、真紀さんの中には拭えない違和感が積もっていきました。
帰省のたびに、負担を背負うのは“嫁”
義実家に着くと、自然と台所に立つのは真紀さん。食事の準備、後片づけ、親戚が集まればお茶出し。義父母の体調の話や近所の噂話を聞く役回りも、なぜか自分です。
一方で、夫はというと、「同窓会があるから」と、旧友に会いに出かけたり、こたつで横になったり……。
「俺は親と話してるから」
その言葉を聞くたび、真紀さんは言葉を飲み込みました。親孝行をしたい気持ちは分かる。でも、その“実務”を自分が引き受けていることに、説明のつかない不満が溜まっていったのです。
「今年は、行きたくない」
12月の中旬、真紀さんは意を決して口にしました。
「ねえ……今年は、義実家に行きたくない」
夫は驚いたように顔を上げます。
「なんで? 正月だよ」
「疲れているし、正直しんどい」
すると、夫は少し苛立った様子で言いました。
「冷たいな。俺の親だよ?」
その一言で、真紀さんの中で何かが切れました。
妻がついに放った一言
「あなたが親孝行したい気持ちは分かる」
真紀さんは、できるだけ落ち着いた声で続けます。
「でもね、私を使って親孝行しないでくれない? 母の日も父の日も私は自分の親とあなたの親の二家族分のプレゼントを用意しているのよ。プレゼントや援助するのは構わない。でも、あなたは私の両親に何かしてくれたことあった?」
部屋の空気が、すっと静まり返りました。
「私が動いて、気を遣って、回している。それを“家族で帰省してる”って言われるのは、正直つらい」
夫は、何も言い返せませんでした。
