「1億円の壁」とは何か
日本の所得税は累進課税を採用しており、給与所得については住民税を含めた税率が段階的に上昇し、最高で55%に達する。一方、株式の譲渡益や配当などの金融所得は、原則として約20%の分離課税である。
この仕組みにより、金融所得の割合が高いほど、所得が増えても税負担率が上昇しにくく、一定水準を超えると逆に低下する現象が生じる。これが「1億円の壁」と呼ばれてきた問題の本質である。
とりわけ、年間所得が1億円を超える層では、給与所得中心の高所得者よりも、金融所得中心の超富裕層の方が実効税率が低くなるケースが常態化していた。
従来の是正策とその限界
この不公平を是正するため、日本では2023年度税制改正により、「特定の基準所得金額に対する所得税額の特例」、いわゆるミニマム税が創設された。この制度は、一定以上の所得を得る超富裕層について最低限の税負担水準を確保することを目的とし、2025年分の所得から適用されている。実際の申告・納税は、2026年の確定申告から行われる。
もっとも、現行制度では対象が年間所得30億円超に限定されており、対象者は約200人程度にとどまっていた。そのため、制度の象徴的意義はあるものの、「1億円の壁」の是正という観点では十分とは言い難いとの批判が根強かった。
ミニマム税の見直し
こうした状況を踏まえ、2026年度税制改正大綱では、ミニマム税の大幅な見直しが盛り込まれた。主な改正点は以下のとおりである。
年間所得基準
30億円超 → 6億円超
総所得からの特別控除額
3億3,000万円 → 1億6,500万円
適用税率
22.5% → 30%
この見直しにより、追加課税の対象者は、従来の約200人規模から、約2,000人規模へ拡大すると見込まれている。
税収効果と政策的意義
政府試算によれば、今回の超富裕層課税強化による追加的な税収増は、年間約3,000億円程度とされている。
もっとも、本改正の主眼は単なる税収確保にとどまらない。給与所得者と金融所得中心の超富裕層との間に生じていた、税負担率の構造的な歪みを是正する点にこそ政策的意義がある。
政府はすでに、先に触れたとおり2025年分所得から年間所得30億円超の層を対象にミニマム税を導入しており、今回の改正はその枠組みを大幅に拡張する措置と位置付けられる。
超富裕層・実務への影響
今回の見直しにより、これまで制度の影響をほとんど受けなかった、年間所得6億円から30億円程度の富裕層が新たに課税強化の射程に入る。
特に、株式やファンドの売却益、高額配当など、金融所得の比率が高い層では、実効税率の上昇は避けられない。今後は、所得構成や資産ポートフォリオを踏まえた、より戦略的な税務・資産管理が求められる局面に入ったといえる。
THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班
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