介護と自立のはざまで
介護離職や親との同居は、本人のライフプランに大きな影響を与えます。『令和4年 就業構造基本調査』によると、介護・看護を理由に仕事を辞めた人は年間約11万人にのぼっています。介護と仕事を両立する難しさから、働き盛りの世代でも離職を余儀なくされるケースが見られ、離職後の再就職や生活設計への不安が課題として指摘されています。
「たとえば親が施設に入って、家の中ががらんとしたら、自分だけ取り残されたような気持ちになるかもしれません。それは少し怖いです」
宏樹さんはそう語りますが、それでも今は「無理に変わろうとは思わない」ともいいます。
「一人で寂しくないかって聞かれますけど、正直“人に決められた幸せ”のほうがずっと寂しいと思うんです」
現在、宏樹さんは月に一度、地域包括支援センターの担当者と面談しながら、将来的な親の介護プランや不動産相続の整理も進めています。自分自身の老後を見据え、「今の自分を責めすぎないようにしている」と語ります。
「“今の時代、40代独身なんて普通だよ”って言ってくれる友人もいます。でも、自分が納得できてないと、どんな言葉も入ってこないんですよね。だからせめて、“他人の言葉で自分を否定しない”ことだけは心がけています」
結婚していない、実家で暮らしている――そんなライフスタイルは、今や珍しいものではありません。それでも、“人と違う選択”をしたとき、親族や世間からの無意識のひと言が、本人の心を傷つけてしまうことがあります。
大切なのは、見た目や肩書きではなく、その人が何を背負い、どう生きているかに目を向けることなのかもしれません。
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