(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢の親とお金の話をするのは、意外に難しいものです。子どもとしては「困ったことがあれば言ってほしい」と思っていても、親世代は「心配をかけたくない」「お金の話は恥ずかしい」と考えてしまいがち。その結果、家族すら知らない“タンス預金”や“隠し通帳”が見つかるケースも少なくありません。

押入れの奥に詰め込まれた、茶封筒の束

「正直、腰が抜けそうになりました」

 

そう話すのは、東京都内に住む会社員の佐藤真由美さん(仮名・52歳)。久しぶりに実家へ帰省し、85歳の父・和男さん(仮名)の部屋を片付けていたときのことでした。

 

中を確認すると、茶封筒の中には紙幣がぎっしりと詰まっていました。1枚、2枚…と数えるうちに手が震えました。合計すると、なんと700万円。すべてが現金だったのです。

 

「一瞬、頭が真っ白になりました。盗難とか、詐欺とか、悪いことばかり考えてしまって…」

 

真由美さんが恐る恐る父に問いただすと、和男さんはしばらく黙り込んだあと、ぽつりと言いました。

 

「通帳に全部入れておくのが、どうしても怖くてな」

 

和男さんは、年金月15万円ほどで暮らす、ごく普通の高齢者です。大きな資産があるわけでもなく、贅沢をする様子もありません。それでも、現役時代に経験した金融機関の破綻や、近年相次ぐ特殊詐欺のニュースを見るたび、「自分の老後は自分で守らなければ」という思いが強くなっていったといいます。

 

「病気になったとき、すぐに使えるお金がないと困るだろ。誰にも迷惑をかけたくなかったんだ」

 

父の言葉を聞いた真由美さんの胸に込み上げてきたのは、驚きと戸惑いでした。

 

「“そんな大金、勝手に隠して”と思う気持ちもありました。でも、それ以上に、ひとりで不安を抱えていたんだと思うと…」

 

思わず涙がこぼれたといいます。一方で、冷静になるにつれ、別の不安もよぎりました。

 

「もし父が認知症になっていたら? もし火事や空き巣があったら? このお金は、簡単に消えてしまっていたかもしれない」

 

内閣府の『令和7年版 高齢社会白書』によると、65歳以上の高齢者の犯罪被害認知件数は1万3,707件にのぼり、法人被害を除いた総認知件数に占める割合は65.4%に達しています。

 

また、相続時に現金の存在が把握されていないと、遺産分割協議が難航する原因にもなります。通帳や証券と違い、現金は記録が残らないため、「知らなかった」「見つからなかった」といったトラブルに発展しやすいのです。

 

 \1月20日(火)ライブ配信/
調査官は重加算税をかけたがる
相続税の「税務調査」の実態と対処方法

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※本記事のインタビューではプライバシーを考慮し、一部内容を変更しています。

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