黒田日銀の金融政策に「失望感を露にする」市場

今回は、黒田日銀の金融政策に「失望感を露にする」市場の声を紹介します。※本連載は、マクロ・インベストメント・リサーチの代表で、最新の経済データを駆使した独自理論が高く評価されている中丸友一郎氏の著書、『2017年 日銀破綻』(徳間書店)の中から一部を抜粋し、2017年から始まるとされる、円高から円暴落、株式大暴落へのシナリオを読み解きます。

黒田日銀は「あくまで補完策だ」との見解を示したが…

約10年ぶりとなるアメリカの利上げを無難に通過し、ホッとひと息ついていた市場は、その2日後となる2015年12月18日の日銀金融政策決定会合は「現状維持」と決め込んでいた。

 

このため、黒田日銀の補完策の発表は大きなサプライズとなった。黒田日銀は「物価の基調は改善している」との発言を繰り返していたので、当時、何かあると見ていた市場関係者はほぼ皆無だった。

 

意表をつかれた市場は、まず株買い・円売り・債券買いで反応。日経平均は一時500円高まで上昇、ドル・円レートも123円後半まで約1円上昇した。

 

それまで、黒田日銀のQQEが市場に与えたインパクトは大きかった。2013年4月4日に決定され、「バズーカ砲」と呼ばれたQQE第1弾(QQE1)は、日経平均を同年の5月高値まで3867円、ドル・円レートを11円押し上げた。

 

2014年10月31日のQQE第2弾「ハロウィーンバズーカ」(QQE2)のときも、日経平均は1カ月強で2372円、ドル・円レートは12円上昇した。しかし、2015年12月の補完策に対する市場の反応は、これまで2回のQQEで急激な円安・株高が進んだ記憶による〝パブロフの犬〟のような条件反射的初期反応にすぎなかった。

 

今回は、日本株、ドル・円レートともに急速に上げ幅を縮小した。当日の引けでは、結局、日経平均の下げ幅が300円を超える1万9000円割れとなった。ドル・円レートも122円を割り込み、ともに補完策発表前の水準を下まわった。

 

日銀は今回、マネタリーベースを年間約80兆円増加させる金融調節目標や、長期国債の保有残高を年間80兆円程度増加させるなど、資産の買入額についてはそれまでの方針を維持した。それゆえ、補完策は追加緩和ではないという見方が広がった。

 

黒田総裁も18日引け後の会見で、負け惜しみのように、今回の措置は下振れリスクに対応した追加緩和ではなく、あくまで補完策だとの見解を示した。

 

また、市場がもっとも「食らいついて」反応したと見られるETFの新たな買入枠の設定についても、過去に日銀が買い入れた銀行保有株式の売却の再開(2016年4月から)にともなって行うもので、ともに3000億円ずつであり、ETFの年間3兆円という購入規模は変わらない。

 

いったんは、パブロフの犬よろしく、過去の記憶から円安・株高で反応したマーケットだったが、補完策の内容の消化が進むに従って瞬間的な熱狂が冷め、失望に転じた格好となった。

過去には、ECBのドラギ総裁も同じ過ちを犯している

なお、市場の期待をコントロールすることに失敗した例は、黒田日銀にとどまらない。2015年12月3日のECB(欧州中央銀行)定例理事会で追加緩和策が決定された直後も、同様の市場の反応が見られた。

 

ドラギ総裁が追加緩和期待を過度に煽った結果、その内容が実際の発表時には失望され、市場では株価が急落するなど、リスクオフの動きが優勢となった。

 

黒田日銀が打ち出した補完策は結果的に市場に受け入れられず、日経平均は上下に880円も乱高下することとなった。

 

市場では、

 

「黒田総裁は、アメリカの利上げを成功させたイエレンFRB議長に続くことができず、ドラギECB総裁の失敗の轍を踏むことになった」

 

という声も出る始末だった。

 

補完策発表後の市場の関心は、早くも、はたして追加緩和がこの先もあるのかにすばやく移っていったが、ロイター通信によれば、

 

「わかりやすい金融緩和策によって、国民や市場の期待に働きかけようとするのが黒田日銀のやり方であったはずだ。しかし、今回の補完策はあまりにわかりにくい。手づまり感さえ感じられてしまう」

 

という批判さえ起こったという。

 

しかも、黒田日銀のETF購入の新枠は、設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業の株式を対象にするという。

 

「日銀は独立性を踏み外し、政治的にすぎる」との批判は、国内でも無視できない。しかも世界で株式を購入している主要な中央銀行は、黒田日銀以外には存在しない。リスクをさらに抱えることになるその行方を、国民だけでなく市場も不安をもって見守っているのだ。

マクロ・インベストメント・リサーチ 代表

1978年一橋大学経済学部卒、米イェール大学大学院修士課程、ジョージ・ワシントン大学大学院博士課程修了。日本輸出入銀行(現国際協力銀行)、世界銀行エコノミスト、JPモルガン主席日本エコノミスト、ロイター・ジャパン投資調査部長などを歴任し、現職。浜田宏一イェール大学名誉教授に薫陶を受け、最新の経済データを駆使した独自の理論は高く評価されている。著書に『儲かる株はどっち?』(徳間書店)など多数。

著者紹介

連載「黒田ショック」が惹起する世界経済大乱

2017年 日銀破綻

2017年 日銀破綻

中丸 友一郎

徳間書店

黒田日銀のマイナス金利・異次元緩和の副作用が、2017年5月に炸裂する! マイナス金利により国債保有を控え始めた国内銀行。やがて日銀は債務超過に陥り、国際マネーの餌食となる! 2017年から始まる円高から円暴落、株…

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