(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢者の単身世帯は年々増加しています。内閣府『令和7年版 高齢社会白書』によれば、65歳以上の一人暮らし高齢者は2025年には815万人にのぼると推計されており、特に女性に多い傾向がみられます。中でも年金のみで暮らす世帯では、食費や光熱費、医療費のやりくりに苦しむ実態も浮き彫りになっています。こうした状況の中、子世代が親の生活をどこまで把握できているのか――。見えにくい高齢者の「限界」について考えます。

「仕送りなんていらない」の本音とプライド

亮介さんは帰京する前に、「これからは月に1万円でも仕送りするよ」と提案しました。しかし、母はきっぱりとこう言ったそうです。

 

「いらない。そんなことしなくていいよ」

 

「お金が欲しいわけじゃないの。ただ…話し相手がいると、楽しいかもね」

 

絹代さんは、金銭面での援助よりも、誰かと笑いながら食卓を囲む「日常の会話」のほうを求めていたのです。

 

近年は、地域包括支援センターや見守りサービスなど、高齢者の孤立防止に向けた取り組みが広がっています。家族が遠方に住んでいる場合でも、定期的な電話やLINE、郵便、そして年に数回の帰省が、孤立や体調悪化の“兆し”に気づくきっかけになることもあります。

 

「仕送り」だけではなく、「生活の質」を保つための関わり方をどう築くか――それが今、都市部で暮らす子世代に求められているのかもしれません。

 

「母が“まだ自分でできる”というプライドを持ち続けていたことに、むしろ尊敬すら覚えました。でも、それが危うさと表裏一体であることにも気づきました」

 

亮介さんは帰京後、自治体の高齢者向け配食サービスを母に紹介し、週1回の定期電話を欠かさないようになったそうです。

 

「たった一言の『ごはん、ちゃんと食べてる?』が、こんなに重い問いになるなんて思わなかった。これからは、“本当に”食べているか、定期的に見に行きますよ」

 

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※本記事のインタビューではプライバシーを考慮し、一部内容を変更しています。

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