「迷惑かけたくない」の先にあった孤独
智也さんは、母の部屋を掃除しながら、かすれた筆跡で書かれたメモを見つけました。
「電気つけすぎない」「外食は月1まで」「お金、頼らない」
そこには、「息子に迷惑はかけたくない」という思いと、「でも、もう限界」というSOSが滲んでいました。
「もっと早く話してくれれば…って、責めたい気持ちもあったけど、それ以上に“申し訳なさ”が強かったですね」
智也さんはそう振り返ります。
智也さんはその後、仕送り額を月5万円に増やし、時折ネットスーパーの食品配送を手配するようになりました。一方で、大学生の娘の学費や将来の老後資金を考えると、「ずっとこのペースで援助を続けられるかは不安」だとも語ります。
近年では、親世代と子世代の双方が経済的に余裕のない「共倒れ予備軍」も増えており、無理な支え合いが思わぬ負担を招くこともあるため注意が必要です。
現在、智也さんは月に1回、実家に顔を出すようにしています。LINEのやりとりも増え、「仕送りしている」というより、「家族として日常的に関わっている」感覚のほうが強くなったといいます。
「親が何も言わないからって、“大丈夫だろう”と決めつけちゃダメですね。気づけてよかったと思っています。あのLINEがなかったら、今も母は冷蔵庫を空にしたまま、誰にも言えずにいたかもしれません」
老親との距離感は難しいものです。それでも、「気づいたときに、ちゃんと向き合う」ことが、親子の絆を守る第一歩なのかもしれません。
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