前回は、愛人に全財産を渡すと遺言しても、残された家族は遺留分を請求できるという規定についてお伝えしました。今回は、相続税がゼロになる可能性もある「配偶者控除」の仕組みについて見てみます。※本連載は、公認会計士・税理士の御旅屋尚文氏、司法書士の池田秀樹氏、特定社会保険労務士の柳勉氏の共著『家族が亡くなった後の手続きと相続がわかる本』(神宮館)の中から一部を抜粋し、家族が亡くなったときに発生するさまざまな手続きについて解説します。
1億6千万円か法定相続分のうち高いほうの額まで非課税
配偶者が遺産を相続した場合、被相続人の財産形成に貢献したであろうことに配慮しなければなりません。また死後の生活を保障するためもあって、配偶者だけに認められる特典があります。
この「配偶者控除」は、配偶者が得ることになった金額が1億6000万円か、あるいは配偶者の法定相続分のどちらかのうち、高いほうの相続分が非課税になるというものです。配偶者が被相続人の財産形成に貢献したことへの配慮です。
ですから、法定相続分が1億円だったとしても2億円だったとしても非課税、したがって、どれだけ相続しても支払い義務は生じないのです。ただし、内縁関係の妻や愛人はこの限りではありません。また、この制度は確定申告が必要なので、その期限に間に合うことが必要です。期限までに相続人同士の話し合いがまとまらず、配偶者の取得分が計算できないと利用できなくなります。
もっとも、分割できない理由(申告期限後3年以内の分割見込書)を税務署長宛に届ければ、いったんは申告期限に配偶者控除がないものとして申告納税しなければなりませんが、分割後、配偶者控除の適用を受けることができます(税金を返してもらえる)。
相続財産の分割では二次相続のことも考慮したい
また、この特典を利用したために損をすることがあるので要注意です。それは、配偶者の相続分が多額だった場合です。
その配偶者が、資産を遺したまますぐに亡くなると、次に相続する人に多額の相続税がかかってしまう場合があるからです。
ここがポイント
配偶者控除により配偶者が相続した場合、相続税はかかりません。
ただし、戸籍上の妻だけに認められた特典です。これには期限がありますし、損をすることもあるので要注意です。
公認会計士、税理士
昭和27年富山県生まれ。滋賀大学経済学部卒業。大学在学中に公認会計士2次試験合格。昭和53年より公認会計士事務所を開業。
現在、経営コンサルティング、税務、監査、各種セミナー講師、テレビ出演と幅広く活躍。
著書に『自分でできる確定申告のすべて』『図解決算書の読み方』『面白いほどよくわかる相続・贈与のしくみ』(以上、日本文芸社)など多数。
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連載葬儀・年金・相続…家族の死亡時に発生する「お金」の手続き
司法書士
東京司法書士会会員。昭和40年新潟県生まれ。平成8年司法書士試験合格、平成10年司法書士登録、平成16年簡裁訴訟代理等関係業務認定。東京都板橋区で池田司法書士事務所を開設。
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特定社会保険労務士
昭和30年山形県生まれ。東洋大学法学部法律学科卒業。昭和57年やなぎ社会保険労務士事務所を開設。労働・社会保険手続、給与計算受託、就業規則等諸規程整備の他、個別労働紛争における斡旋代理の受託。NPOヒューマンエクセル理事長。
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