前回は、愛人との間に生まれた子どもには、どの程度の相続割合が認められているかを見ました。今回は、愛人に全財産を渡すと遺言しても、残された家族は遺留分を請求できるという規定についてお伝えします。※本連載は、公認会計士・税理士の御旅屋尚文氏、司法書士の池田秀樹氏、特定社会保険労務士の柳勉氏の共著『家族が亡くなった後の手続きと相続がわかる本』(神宮館)の中から一部を抜粋し、家族が亡くなったときに発生するさまざまな手続きについて解説します。

家族の生活を守るために認められる遺留分

相続人が、配偶者・第1順位の子ども・第2順位の親である場合、全財産を愛人に相続させるという遺言書を書いておいても、その通りにはなりません。

 

それは、被相続人の財産に生活をゆだねていた家族の生活を守るためです。家族が受け取るべき相続財産を「遺留分」といいます。遺言で全財産を譲られることになっている愛人から、遺留分を取り戻すことを「遺留分の減殺請求」といいます。

 

つまり、愛人に全財産を譲ることはできません。どんな場合でも相続人の遺留分は認められるのです。

配偶者や子どもの遺留分は、本来の相続割合の1/2

「遺留分」は、相続財産の2分の1(相続人が直系尊属のみの場合は3分の1)という規定があります。

 

たとえば、配偶者だけの場合は相続財産の2分の1、配偶者と子どもの場合は配偶者が4分の1で、4分の1を子どもの数で分けます。また、配偶者と親の場合は、親が6分の1、配偶者は3分の1になり、親だけなら3分の1です。

 

また、たとえば愛人が副社長としての役割を果たし、財産形成に多大な寄与をしたのに、本妻やその子どもが被相続人の財産を食いつぶしてしまっていたなどという場合でも、本妻や子どもの遺留分は認められてしまいます。

 

戸籍上の妻や子どもの権利はそれほど大きいものなのです。

ここがポイント

愛人や特定の子どもにだけ全財産を譲るという遺言書を書いても、他の権利者を守るため、その通りにはなりません。他の権利者の分を「遺留分」といい、所定の期間内に請求できます。

本連載は、2016年12月11日刊行の書籍『家族が亡くなった後の手続きと相続がわかる本』から抜粋したものです。その後の税制改正等、最新の内容には対応していない可能性もございますので、あらかじめご了承ください。

家族が亡くなった後の手続きと相続がわかる本

家族が亡くなった後の手続きと相続がわかる本

御旅屋 尚文,池田 秀樹,柳 勉

神宮館

シニア世代必読! 大切な家族が亡くなったとき、今までに経験したことのないような深い悲しみと同時に、膨大な手続きをしなければなりません。 本書では大切な家族が亡くなった後に行う葬儀・法要の流れから、年金・保険・名…

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