(※写真はイメージです/PIXTA)

「海の近くでのんびり暮らしたい」「自然に囲まれた土地で、第二の人生を過ごしたい」と、定年後に都市部から地方への移住を選ぶ高齢夫婦は決して少なくありません。国も地方創生や移住支援制度を整備して後押ししていますが、現実は理想通りにいかないことも少なくありません。生活インフラの違いや人間関係、健康面など、住んでみて初めて気づく課題も多く、移住後に“後悔”を感じるケースもあるのです。

夫婦間に生じたズレ

誠一さんは再び、東京の友人と会いたい、時々は都内に戻りたいと言い出しました。これに対し、美紀さんは複雑な思いを抱えました。

 

「私はまだ、ここで暮らしていたかった。でも、夫に我慢させるわけにもいかないし…」

 

結局、佐藤夫妻は「今後は都内の息子宅との“二拠点生活”に切り替える」という選択をしました。

 

「正直、後悔しているわけではないんです。でも、“理想だけでは暮らしていけない”と痛感しました」

 

移住支援制度の一環として「お試し移住住宅」や「二地域居住」のサポートを行う自治体も増えています。

 

「自然に囲まれた場所で趣味を楽しみたい」「もう少し静かな環境で暮らしたい」――そうした思いから、都市と地方の“二拠点生活”に魅力を感じる人は一定数存在します。ただし、移住の成否を左右するのは、医療機関や交通手段といった生活基盤の有無です。

 

理想の老後を求めて始まった地方移住も、暮らし続けるなかで新たな課題が浮かび上がってきます。自然豊かな環境、ゆったりとした時間の流れ――それらは確かに魅力的ですが、医療や交通、人とのつながりといった「生活の土台」も同じくらい大切です。

 

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