「安心のはずの資産が、心配のタネに」
「それまでは“貯金は老後の安心材料”だと思っていたんです。でも、最近では“どう使えばいいのか”“いつ崩すのが正解なのか”ばかり考えてしまって……」
佐川さん夫妻が直面しているのは、「資産があるからこそ、守るために慎重になりすぎて楽しめない」というジレンマでした。実際、貯金を切り崩すことに抵抗を感じ、年金の範囲でやりくりしようとする高齢者は少なくありません。
また、資産があることで、子どもや親族から「老後も安泰だろう」と思われ、相談や支援の機会が減ることもあるといいます。
「いま思えば、“貯めすぎた”のかもしれません。必要以上に安心を追い求めて、その分、“いまを楽しむ心”を失っていたのかもしれませんね」
総務省『家計調査(2024年)』によると、高齢夫婦のみの無職世帯の平均支出は月約25.6万円、平均的な年金等による可処分所得は約22.2万円で、月約3.4万円の赤字が出る計算です。一見この差を埋めるだけの資産があれば安心に思えますが、心理的な「安心」とは必ずしも一致しないのが現実です。
佐川さん夫妻も、最近では資産運用や相続、介護保険についての情報を積極的に収集するようになったといいます。
「お金よりも、“選択肢”があることが大事なんだと気づきました。施設に入るのか、在宅にするのか。自分たちで決められるように、もっと知っておかないと」
「幸せそうに見えるでしょうが、心の中ではずっと不安と葛藤していました。でも、ようやく“いまの生活をちゃんと味わおう”って思えるようになってきたんです」
老後資金は「どう使うか」「どう安心につなげるか」まで考えてこそ、本当の意味での“備え”になるのかもしれません。
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