物価高の冬、じわりと削られる生活
ここ数年、とくに冬場の家計が厳しくなっていると奈々さんはいいます。
「スーパーでいつもの食材をかごに入れても、レジで『えっ?』となる金額。光熱費も高くて、暖房は必要最低限にしています。娘と毛布にくるまって過ごす夜もあります」
特定非営利活動法人グッドネーバーズ・ジャパンが自団体が運営するフードバンク「グッドごはん」の利用者である低所得のひとり親家庭を対象に、年末年始の家計の見通しについて行った調査によると、「非常に苦しい」と回答した人が最も多く、「やや苦しい」と合わせた割合は8割に及びました。「季節行事の食事をあきらめる」「暖房を我慢する」といった回答も多く、奈々さんの状況は決して特別ではありません。
「物価上昇により、昨年の同じ時期と比べて、現在の暮らしの中で変わったこと」について回答を得たところ、「十分な食料を買えないようになった/買えないことが増えた」と回答した人は63.4%、「貯金を切り崩して生活するようになった/切り崩すことが増えた」と回答した人は54.3%、「生活に必要な水道・電気・ガスの使用を控えるようになった/控えることが増えた」と回答した人は50.2%でした。
さらに「物価上昇を受けて、この年末年始の家庭での食事にどのような影響が出ると思うか」を質問した結果、「季節のイベント(お正月・クリスマス等)に際した食事を用意できない」「経済的に購入できる食材が限られ、栄養が偏る」を選択した人が6割を超えました(複数回答)
「娘と笑って年を越したい」
家計的に厳しい中でも奈々さんはなんとか小さなクリスマスケーキを予約しました。クリスマスプレゼントは娘が欲しがっていたシール帳とシールです。
「お友達との交換が流行っているみたいで、夏に妹と会ったときにそんな話をしたんです。そしたら、妹が可愛いシールを少しずつ集めて送ってくれて……その気持ちが本当に嬉しくて、ありがたかったです」
こうした“ささやかな準備”にさえ気を遣う毎日ですが、奈々さんが前を向ける瞬間もあります。
「娘が“ママ、おしごと頑張ってね”って言ってくれるんです。そのたびに、『よし、あと一ヶ月頑張ろう』って思えるんですよね」
クリスマスもお正月も、豪華である必要はありません。奈々さんが願うのは、ただ一つ。
「特別なものじゃなくていいんです。娘と一緒にあたたかいご飯を食べて、笑って年を越せたら……それだけで十分です」
厳しい現実の中でも、なんとか前を向いて暮らす母と娘。その姿は、「季節を楽しむ余裕すら奪われるひとり親家庭が増えている」現実を静かに映し出していました。
[参考資料]
認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパン「ひとり親家庭における年末年始の暮らしに関するアンケート」
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