築40年の木造アパートを売却したら、突然「税務署」から“お尋ね”が届いたワケ【税理士が解説】
旧耐震アパートの問題点
旧耐震基準が適用されたアパートの建築物としての問題点は、地震に弱いことにつきます。もっとも建築基準法3条では、下記のとおり定めています。
・現に存する建築物に法令の規定に適合しない部分がある場合には、当該建築物に対しては、当該規定を適用しない
・当該建築物が、法改正以前の規定に違反している場合には、適用しない
やや複雑ですが、要約すると、基準が変わっても、過去の基準に適合していた建築物は違法にはならない、ということです。
現在の基準には適合しないが、建築当時の基準には適合している建築物のことを、「既存不適格」といいます。
旧耐震アパートを所有するオーナーが負う責任範囲とは?
先にご紹介した神戸地裁平成11年9月20日判決でも、この考え方を前提に、昭和39年建築のアパートについて、建築当時の基準に適合しているかどうかを判断し、適合しないから責任を負う、と結論づけています。この裁判例におけるアパートは、既存不適格ですらなかったため、アパートオーナーは責任を負うことになりました。
阪神・淡路大震災や、平成23年3月11日の東日本大震災を受けて、旧耐震アパートの住人が、オーナーに対して、新耐震基準を満たすように耐震補強工事をすることを求める訴訟を提起することが増えましたが、建築基準法の考え方に基づけば、請求は認められないことになります。
注意しなければならないのは、「アパートは老朽化する」ということです。旧耐震アパートは、新耐震アパートよりも長い時を経過しているのですから、老朽化が進んでいることが通常です。オーナーには、新耐震基準を満たす必要はなくとも、通常の使用に必要な程度の修繕はする義務があります(民法606条1項本文)。
オーナーはアパートを安全に使用収益させる責任を負う
旧耐震アパートは新耐震基準に適合しておらず、新しいアパートに比べて地震に弱いことが通常です。もっとも、建築基準法では、「旧耐震アパートが、建築当時の耐震基準に適合していれば、既存不適格として違法ではない」としています。そのため、オーナーは、旧耐震アパートが、新耐震基準に適合するように補強工事を行う責任を負うものではありません。
しかし、アパートのオーナーは、アパートの安全を維持して、賃借人に安全に使用収益※させて、通行人等にも被害を与えないようにする責任を負っています。そして、旧耐震のアパートは老朽化が進んでいることが通常であり、新耐震基準を満たさないだけでなく、通常使用するための安全性すら備えていないことがよくあります。
※私法上の概念で、ものを直接に利活用して利益・利便を得ることをいう
このような場合には、オーナーは、アパートを修繕して、賃借人に安全に使用収益させて、通行人等にも被害がおよばないようにする責任を負うことに、注意する必要があります。
監修
柿沼 彰氏
柿沼彰法律事務所
弁護士

