築40年の木造アパートを売却したら、突然「税務署」から“お尋ね”が届いたワケ【税理士が解説】
裁判所の判決…特約があっても「民泊使用は認めない」
この裁判の事例では、アパートの賃貸借契約において、
・「賃借人の住居として使用する」という目的
・賃借人が第三者に転貸することを賃貸人は予め承諾する
という条項が設定されていたところ、賃借人は、借りていた部屋を民泊として使用していたため、これが契約違反に該当するかどうかということが問題となりました。
賃借人側は、「第三者への転貸が可能」ということなのだから、民泊で第三者に使用させることも認められている」と争いましたが、裁判所は、契約書において「住居としての使用」に限られているという点を重視し、転貸が可能という特約があったとしても、民泊での使用までは認める趣旨ではないと判断しました。
その理由として裁判所は、
転貸が可能と定められている場合であっても「賃貸借契約の文言上はあくまでも住居として本件建物を使用することが基本的に想定されていた」こと、および「特定の者がある程度まとまった期間にわたり使用する住居使用の場合と、1泊単位で不特定の者が入れ替わり使用する宿泊使用の場合とでは、使用者の意識等の面からみても、おのずからその使用の態様に差異が生ずることは避け難い」
という点を挙げています。
以上の通り、契約書で「居住目的」と定められている賃貸物件を民泊で使用することは、民泊の使用が特約などで明示的に定められていない限りは、基本的に契約違反に該当するということになると考えられます。
とはいえ、このように民泊での利用が契約違反になるとしても、賃貸借契約における契約の解除は「信頼関係破壊の法理」が適用されます。(契約解除が認められるためには、契約違反の事実に加え、その事実によって貸主と借主間で信頼関係が破壊されたといえることが必要です。)
したがって、賃貸人が契約を解除できるかどうかは、「賃借人が賃貸物件を民泊に使用していたことによって賃貸人との信頼関係が破壊されたといえるか」という点が次に問題となります。
この点は、民泊での利用が直ちに信頼関係を破壊するとまでは一概にはいえず、ケースバイケースの判断になるところです。たとえば、民泊で使用していた期間や頻度がごく短期間またはわずかな回数だったという場合には、信頼関係は破壊されていないと判断される可能性があります。
他方で、その逆の場合(民泊として使用していた期間が長く、頻繁に使用されていた場合)や、民泊利用によって近隣住民とトラブルが発生していたような場合には、信頼関係が破壊されたと判断される可能性が高いといえます。
さきほど紹介した東京地方裁判所平成31年4月25日判決においては、民泊使用によって信頼関係が破壊されたか否かという点について「現に、アパートの他の住民からは苦情の声が上がっており,ゴミ出しの方法を巡ってトラブルが生ずるなどしていた」と述べて、周辺住民とのトラブルがあったことを信頼関係破壊のいち事情と認定していますので、この点は参考になるところです。
監修:弁護士 北村 亮典

