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「社内政治」が部下のモチベーションを上げる
ミドルマネジャーの役割は、タテ・ヨコの調整や資源獲得だけではなく、日常的な部下のマネジメントという下方向への影響力の発揮も重要です。
ミドルマネジャーは部署やチームの責任者として、部下に対して指揮命令の権限を持っていますが、命令や指示だけで部下がやる気を出すとは限りません。そこで本節では、モチベーション向上における社内政治の役割に注目します。
社内政治は一般的に、社員のモチベーションを下げるものと思われがちです。多くの人は「社内政治」という言葉にネガティブな印象を抱きます。
たとえば、新入社員に「うちの会社は結構、社内政治がありますよ」と伝えたら、たいていの場合はイヤな顔をされるでしょう。実際に、1980年代から2000年代にかけて注目された「組織内政治の知覚(POPs)」の研究は、POPsが社員の不満足につながることを示しています(Cho et al., 2018)。
ただし、これらの実証研究は社内政治のマイナス面だけに着目していました。社内政治の建設的な側面に目を向けると、リーダーが部下のモチベーションを維持・向上させるために、社内政治を活用すべき場面もあるといえます。
リーダーが部下のモチベーションを高めようとしても、同じアプローチがすべての部下に効果的とは限りません。会社は同じような人で構成されているわけではありません。部下の関心や価値観は1人ひとり異なります。
ある部下は、ビジョンやミッションなど仕事の意義にやりがいを感じます。一方で、そうしたことには関心が薄く、金銭的な報酬に動機づけられる部下もいます。
社内政治のスキルが高いリーダーの特徴
ドイツで行われたクリスチャン・ユーエンらの研究によると、社内政治のスキルが高いリーダーは、部下の性格や状況を見て、次の2つのリーダーシップ行動を使い分けています。(Ewen etal., 2013)。
・取引型の行動(例:成果に応じて報酬や評価を明確に伝える)
・変革型の行動(例:部下にビジョンを語り、成長ややりがいを実感できるよう働きかける)
つまり、「この人には成果報酬が有効だ」「この人にはやりがいが必要だ」といったことを見きわめ、その通りに行動できるのです。また、ユーエンらの分析は、このような見きわめができるリーダーのもとで働く部下は仕事への満足度が高いことも明らかにしています。
社内政治は、部下の多様な価値観や動機をふまえ、それに応じて働きかけるために効果的なマネジメントの手段になりえます。これを「社内政治」と呼ぶかどうかは人によって異なるかもしれません。
それでもミドルマネジャーは、制度やルールといった公式な手段に加え、非公式なコミュニケーションや人間関係も活用しながら部下の意欲を高める役割を担っていることは確かです。
政治的リーダーシップとは、状況を正確に把握し、相手の反応を見きわめながら柔軟に対応する、実践的なリーダーシップのあり方だといえます。
木村 琢磨
博士
昭和女子大学 教授
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