(※写真はイメージです/PIXTA)

総務省『住民基本台帳人口移動報告』によると、2021年には東京23区からの転出者が転入者を上回る「転出超過」が起き、地方移住に関心を持つ世帯が拡大しました。中でも、定年後の“第二の人生”を自然豊かな土地で過ごそうと考える中高年夫婦の移住については、地域の空き家活用や農業支援とも相まって、各地で支援制度が整備され始めています。しかし、理想を抱いて移住したものの、「思っていた生活と違った」「夫婦での価値観がずれていた」など、想定外の現実に直面するケースも少なくありません。

「老後は“暮らし”より“関係”が問われる」

地方での生活は、買い物の不便さや医療アクセスなど都市部とは異なる課題もあります。

 

また、老後に移住する場合は“どこに住むか”以上に、“誰とどう過ごすか”が問われることも。人間関係の希薄さは、孤立や精神的負担につながるリスクとして挙げられます。

 

「畑仕事は好き。でも、夫と“違う生活”を送っているようで寂しくなる時もあるんです」

 

そうつぶやく真由美さんの表情は、少しだけ曇っていました。

 

2年が経った今、真由美さんは週に数回、地元の直売所で販売員として働き、地域の人々とのつながりを広げています。直樹さんは家で読書やテレビを楽しみながら、月に一度は東京の友人と会うために上京するようになったそうです。

 

「完全に理想通りではないけど、お互いの“ちょうどいい距離感”がわかってきたのかも。土をいじっている時間は、今でも私にとって大事な時間です」

 

地方移住に「成功」や「失敗」の答えはありません。ただ、暮らしの中にある“すれ違い”や“迷い”とどう向き合うか――それもまた、人生の後半戦における大切なテーマの一つなのかもしれません。

 

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