●金融政策を議論し決定するFOMCでは、7名の理事と5名の地区連銀総裁が投票権を保有する。
●2026年に投票権を持つ理事と地区連銀総裁の計12名のうちハト派3名、中立7名、タカ派2名。
●パウエル議長の任期満了などでハト派の増加が見込まれるも全体では依然バランスの取れた陣容。
金融政策を議論し決定するFOMCでは、7名の理事と5名の地区連銀総裁が投票権を保有する
米国の連邦準備制度(The Federal Reserve System)は、1913年の連邦準備法によって設立された中央銀行制度です。その最高意思決定機関が、ワシントンにある連邦準備制度理事会(The Board of Governors of the Federal Reserve System)で、一般的にFRB(The Federal Reserve Board)という略称で呼ばれています。FRBは連邦政府の1機関であり、7名の理事(うち議長1名、副議長1名、金融監督担当副議長1名)で構成されています。
FRBは、その下に12の地区連邦準備銀行(地区連銀)を抱え、業務に関する広範な監督権限を付与されています。なお、金融政策の決定に関する議論は、連邦公開市場委員会(FOMC)で行われ、7名の理事と5名の地区連銀総裁が投票権を持ちます。理事とニューヨーク地区連銀総裁は、常に投票権を持つ常任メンバーですが、4名の地区連銀総裁は、輪番制により1年の任期となります。
2026年に投票権を持つ理事と地区連銀総裁の計12名のうちハト派3名、中立7名、タカ派2名
つまり、投票権を持つ5名の地区連銀総裁のうち、ニューヨーク地区連銀総裁を除いて、4名が毎年入れ替わることになります。2026年は、クリーブランド、フィラデルフィア、ダラス、ミネアポリスの各地区連銀総裁が新たに投票権を持つメンバーとなります。なお、2026年のFOMCで投票権を持つメンバーの金融政策スタンスについて、ハト派(景気重視)、中立、タカ派(物価重視)の3つに区分したものが図表1です。
弊社は7名の理事のうち、ボウマン理事、ウォラー理事、ミラン理事の3名はハト派、パウエル議長など残り4名は中立とみています。また、5名の地区連銀総裁については、ニューヨーク地区連銀のウィリアムズ総裁、フィラデルフィア地区連銀のポールソン総裁、ミネアポリス地区連銀のカシュカリ総裁の3名が中立、クリーブランド地区連銀のハマック総裁、ダラス地区連銀のローガン総裁の2名がタカ派と考えます。
パウエル議長の任期満了などでハト派の増加が見込まれるも全体では依然バランスの取れた陣容
なお、2026年のFOMCで投票権を持つ12名のメンバーに加え、投票権を持たない残り7名のメンバー(図表2)についても、金融政策のスタンスは3、6、9、12月のFOMCで公表される「政策金利水準の分布図(ドットチャート)」に反映されます。さて、2026年は、1月にミラン理事の任期が満了し、2月には5年に1度のFRB理事による地区連銀総裁の任期更新の承認採決が行われ、5月にはパウエル議長の任期が満了します。
次期議長の最有力候補として、米国家経済会議(NEC)のケビン・ハセット委員長の名前が報じられており、ミラン理事の後任もハト派寄りの人物の就任が予想されます。ただ、地区連銀総裁の任期は、理事の過半数の承認で更新される見通しです。ミラン理事とパウエル議長の後任がハト派の場合、2026年のFOMCで投票権を持つ12名のうち4名がハト派になりますが、FOMC全体としては、依然バランスの取れた陣容と判断されます。
※当レポートの閲覧にあたっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『2026年FOMCメンバーの金融政策スタンス【三井住友DSアセットマネジメント・チーフマーケットストラテジスト】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト
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