資産移転と教育負担の軽減を目的に創設
教育資金贈与の非課税制度は、高齢世代に偏在する金融資産を若年世代へ移転させるとともに、教育費の負担を和らげる目的で導入された。贈与者が金融機関に教育資金専用口座を開設し、一括拠出した資金について、受贈者1人あたり最大1,500万円までが非課税となる仕組みだ。
制度開始当初は一定の利用があったものの、近年は利用件数が減少している。2024年度の利用件数は約6,800件にとどまり、金融機関を介した専用口座の開設や領収書の提出など、手続きの煩雑さが利用低迷の一因と指摘されている。
富裕層偏在による「格差固定化」論も
制度の恩恵を受けられるのは、多額の教育資金を一括贈与できる家庭に限られる。このため利用者は富裕層に偏っているとの指摘が強まり、「格差の固定化につながる」との批判が与党内外から上がっていた。
加えて、近年は幼児教育・保育の無償化や高校授業料の実質無償化が進み、公的支援が大きく拡充された。こうした状況から、制度が果たすべき役割は相対的に縮小したとの見方が強く、与党税制調査会でも「廃止はやむなし」との意見が出ている。
非課税枠の仕組みとメリット
非課税枠は、学校への支払いについては1,500万円、学校外の教育費については500万円が上限となる。
たとえば祖父が孫へ2,000万円を一括贈与するケースでは、制度を利用することで、本来であれば課される数百万円規模の贈与税を回避できる。こうした大口の非課税メリットは制度の大きな特徴であったが、活用できる家庭が限定的である点が課題となっていた。
また、学習塾や習い事、通学定期券など学校以外の教育費は500万円までが非課税対象とされる一方、学校が指定した学用品は対象だが個人的に購入した文具は対象外となるなど、細かな規定の多さも利用しづらさを生んでいた。
相続税が課されるケースも
教育資金として贈与した資金が未使用のまま残った状態で贈与者が死亡した場合、一定の条件下で残額が相続税の課税対象となる。特に2023年4月以降の拠出分は原則として相続財産とみなされるため、制度の仕組みを十分に理解しないまま利用すると、思わぬ課税を受ける可能性があった。
制度終了後は通常贈与や相続時精算課税が中心に
非課税制度が延長されない場合、2026年4月以降は教育資金の贈与についても通常の贈与税の枠組みが適用される。年間110万円までの基礎控除や、2,500万円まで非課税で贈与できる相続時精算課税制度の活用が中心となる見通しだ。
教育費に対する公的支援は拡充しているものの、大学進学費用を中心に家計の教育負担への不安は根強い。制度終了後、政府がどのような教育費支援策や資産移転政策を講じるのか、今後の議論が注目される。
THE GOLD ONLINE編集部ニュース取材班
\1月20日(火)ライブ配信/
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