(※写真はイメージです/PIXTA)

人生100年時代を迎えるなか、年金と退職金を頼りにした“老後設計”は、多くの家庭にとって切実な課題です。総務省『家計調査(2024年)』によると、高齢夫婦のみの無職世帯の平均支出は月約25.6万円。一方、可処分所得は平均約22.2万円にとどまり、月々約3.4万円の赤字が生じています。この“足りない3.4万円”をどう埋めるかが、老後の生活の安定を左右します。そうしたなかで、退職金をどう管理し、どのように使うのかは夫婦の信頼関係にも大きく関わります。しかし「夫に任せきりだった」「使い道を知らなかった」というケースも少なくありません。

「家族の老後資産」は“共有財産”として考えるべき

現在、佐和子さん夫婦は、家計の見直しと老後資金の再設計を専門家に相談しながら進めている最中です。ファイナンシャルプランナーからは、「資産状況を見える化し、月ごとに“使ってよい金額”を明確にすること」「医療・介護費を想定した“生活防衛費”を確保しておくこと」などの助言を受けたといいます。

 

「退職金は家族の“安心の源”として、一緒に考えるべきだったんだと、今になって思います」

 

退職金は一生に一度きりの大金です。まとまった金額を手にしたことで、気持ちが大きくなり、つい使いすぎてしまうケースもあります。しかし、寿命の延びや物価上昇、医療・介護費の増加などを考えると、「今後30年近くを支える資金」として慎重に計画する必要があります。

 

総務省『家計調査(2024年)』によれば、高齢夫婦のみの無職世帯の平均支出は月約25.6万円。一方で、平均的な可処分所得は月22.2万円にとどまり、毎月3.4万円の赤字が生じています。この“足りない3.4万円”を補うために、退職金の一部を「赤字補填資金」として確保しておくのが現実的です。

 

金融機関では、退職金を一定期間預けると優遇金利が適用される「退職金専用定期預金」などもあります。元本保証型の商品を活用することで、大きなリスクを負わずに運用することも可能です。反対に、ハイリスクな投資に手を出す前に、「本当に必要な支出をまかなえるだけの資金は確保されているか」を見直すことが大切です。

 

今回の佐和子さんのケースは、お金の使い方の問題であると同時に、夫婦間の“情報と感情の共有”の難しさも浮き彫りにしています。退職金の金額以上に、「それをどう使うか、どんな未来を描いているのか」をすり合わせる対話こそが、長い老後を支える土台となるのかもしれません。

 

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