母親が風呂場で転倒「どうしてそんなことに!」「あのね…」
ところがある日、会社で仕事をしているみどりさんのもとに幸枝さんから電話がかかってきました。
「お義母さん、お風呂場で転んで、いま病院なの!」
「…えっ!」
くわしい状況がわかったらすぐ連絡する、といって幸枝さんは電話を切りました。みどりさんは気が気でなく、仕事も手につきません。
幸枝さんから2度目の連絡があったのは、みどりさんが自宅に帰ってすぐでした。話を聞くと、夕食後、お風呂に入るために脱衣しているときにバランスを崩し、扉を開けていたお風呂場の床部分に派手に尻もちをついてしまったということでした。
「なんて危ない! どうしてそんなことに…!?」
「あのね、みどりさん…」
幸枝さんは口を開きました。
母親はもう高齢で、手足の力が衰えていること。みどりさんが送る洋服や下着を喜んで身につけているが、身幅が狭い、ピッタリしすぎているなど、高齢者には向かないものが多いこと。
「タイツをはいて、靴下をはいて、足首までのスカートをはいて、ボレロを着て、その上からショールして…。そんなふうに高齢のお義母さんを〈グルグル巻き〉にしたら、本当に危ないの! でも〈みどりが選んでくれたから〉ってやめてくれないのよ…。転んだのも、フリルのついた靴下を伸ばさないように脱ごうとしてバランスを崩したんだから!」
2022年「国民生活基礎調査」によると、要介護となる原因の1位は認知症で23.6%、2位は脳卒中等の脳血管障害で19.0%ですが、3位は13.0%で骨折・転倒となっています。
「もし寝たきりになったら、あなた、面倒見てくれるの!?」
高齢者の日常を理解していなくて…
「1年に1回ぐらい帰郷していますが、そんなに大きな変化には気づけませんでした。声も張りがあって、元気な母だと思っていたのに…」
みどりさんは反省したといいます。
「お菓子を食べ過ぎれば体重が増えますし、手足が動かしにくい服を着たり、見た目重視のスリッパやサンダルを履けば、転倒のリスクもありますよね。私には、全然高齢者の日常が見えていなくて…」
みどりさんは幸枝さんにわびて、必要なものなどは幸枝さんの意見も聞くようにしました。
「母にはずっと元気でいてほしいですから…」
