(※写真はイメージです/PIXTA)

令和7年版『高齢社会白書』によると、65歳以上の者がいる世帯のうち、20.2%(約543万世帯)が「親と未婚の子のみ」で構成されているとされています。子育てを終え、「これからは夫婦水入らずで穏やかな老後を」と願う高齢世帯にとって、思わぬ壁となるのが“中高年の子どもの帰還”です。離婚や失職をきっかけに、実家へ戻ってくる40〜50代の子。最初は「一時的な同居」のつもりが、気づけば家計や心身の負担を圧迫されていた――。そんな現実に直面する老夫婦は、決して少なくありません。

2階は“無職の長男”と“シングルマザーの長女+孫”の空間に

東京都在住の斉藤啓子さん(仮名・74歳)は、夫の正雄さん(仮名・76歳)と築40年の戸建てで暮らしていました。長男・学さん(仮名・49歳)は20代でとある企業に就職しましたが、うつ病をきっかけに30代前半で退職。その後はアルバイトもせず、実家で暮らし続けてきました。

 

「仕事に行く様子もなく、昼夜逆転でゲーム漬け。親として心配はしていましたが、本人が“まだ無理”というので、無理強いもできませんでした」

 

食事も洗濯も親任せ。家に生活費を入れることもなく、家の中に“もうひとつの家庭”のような生活空間を築いていたといいます。

 

そんなある日、長女の真奈さん(仮名・44歳)が、8歳になる娘を連れて帰ってきました。

 

「離婚して、パートの収入だけじゃ家賃が払えない。しばらくここにいていいかな?」

 

そう言って2階の空き部屋に入り込み、「ここ、私の部屋にしていいよね?」と当然のように暮らし始めたのです。

 

啓子さんは戸惑いながらも、「孫がかわいそうだから」と受け入れました。しかし、1階は夫婦の生活空間、2階は“無職の長男”と“シングルマザーの長女+孫”という構図になり、家の中の雰囲気は一変します。

 

啓子さん夫妻の年金収入は、合計で月23万円ほど。持ち家でローンも完済しており、共働き時代に貯めた貯金も3,000万円あるため、「生活に困ることはない」と思っていました。

 

しかし、2人の“子ども世帯”を抱えるようになってからは、食費・水道光熱費が跳ね上がり、買い物の量も一気に増加。学校用品や孫の習い事費用まで啓子さんが一部負担するようになり、徐々に家計の不安が募っていきました。

 

「子どもたちは“いずれ出ていく”と言いますが、その“いずれ”がいつなのかは誰にもわかりません」

 

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