「生活保護でも…」と漏らす長男
さらに不安なのは長男・学さんの存在でした。
40代後半になっても無職のままで、職業訓練や就労支援にも消極的。ある日、彼はこうつぶやいたといいます。
「もう働くのは無理かも。生活保護でも受けようかな……」
しかし、実家暮らしの場合、世帯分離が難しく、親の年金収入が一定以上あれば生活保護の対象にならないことが多くあります。斉藤家もそれに該当し、支援を受けることは困難でした。
「どうしてもと言うなら家を出ていくしかない。でも、あの子が外で一人暮らしできるとは思えません」
啓子さんは、複雑な心境を明かします。
正雄さんは最近、家の中でテレビを見ることすら減りました。孫の勉強時間にかぶらないように、音量を最小限にし、2階には「気を遣って上がらない」生活が日常となりました。
「この家、もともと私たち夫婦のものだったのに……。なんだか、自分の家じゃないみたいです」
啓子さんは、静かにそうつぶやきました。
「孫はかわいい、子どもも心配。でも、このままずっと“支え続ける”のかと思うと……自分の最期をどう迎えればいいのか、不安になります」
「子どもを見捨てることはできない」と思うのは、多くの親にとって自然な感情です。しかし、それが何年も続くことで、老後資金が枯渇し、自らの生活や健康まで脅かされることもあります。
親の資産があるうちは支えられるかもしれませんが、年齢とともに介護や医療の問題も出てきます。「いつか出ていく」「そのうち働く」という“先送りの言葉”に、親世代がどこまで付き合うか――老後の安心を守るためには、家族間でも現実的な線引きが必要なのかもしれません。
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