(※写真はイメージです/PIXTA)

「FIRE(早期リタイア)」という言葉が広く知られるようになり、定年を待たずに職を離れる選択肢をとる人が増えてきました。資産形成や老後設計がうまくいけば、自由な生活を送れる夢のような選択肢に見える一方で、現実には“見誤り”から生活が破綻するケースも少なくありません。

「勝ち逃げできると信じて、55歳で退職した」

「退職金が約3,000万円、保有株式や投資信託、企業型DCを合わせた資産が9,000万円ほど。合計で約1.2億円になったので、これだけあれば年金支給までの10年を十分に暮らせると考えました」

 

そう語るのは、都内在住の元サラリーマン・小山和広さん(仮名・58歳)。一部上場企業で30年以上勤め、部長職として最後の3年間を勤め上げたのち、2022年に55歳で早期退職を選びました。

 

小山さんは「老後資金は1億円必要」といった情報を信じ、「自分はもう逃げ切れる」と判断。念願だったセミリタイア生活に入りました。

 

しかし、「自由な生活」は1年足らずで暗転します。

 

「会社勤め時代は家計が自然と引き締まっていたんですが、時間ができると外食や旅行、買い物が増えて。1ヵ月20万円で生活するつもりが、実際には30万円かかる月もありました」

 

さらに2023年〜2024年にかけて、物価とエネルギー価格の上昇が家計を直撃。食料品や電気代の値上げに加え、2024年5月には政府の電気・ガス料金補助が終了した影響もあり、支出は想定以上のペースで増えていきました。

 

「投資していた米国株や投信も、ちょっとした下落で一気にメンタルがやられて…。含み益が減っていくのを見て『このままじゃ足りなくなる』と気づいたんです」

 

小山さんが「最大の誤算だった」と語るのは、公的年金の支給開始年齢でした。

 

「会社員時代の見込みでは、60歳から特別支給の厚生年金がもらえると思い込んでいたんですが、自分の生年だと“報酬比例部分”の支給開始は65歳からなんです。それを知ったのは、退職後でした」

 

現在の制度では、男性は1961年4月2日以降生まれの場合、特別支給の厚生年金は受け取れず、原則65歳支給となっています。さらに繰下げ受給などを選ぶと、70歳開始となる場合も。

 

「支出に耐えきれず、手持ち資産を取り崩すペースが上がっていきました。心配になって、証券口座の残高を見ては動悸が止まらなくなって…」

 

 \1月20日(火)ライブ配信/
調査官は重加算税をかけたがる
相続税の「税務調査」の実態と対処方法

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※本記事のインタビューではプライバシーを考慮し、一部内容を変更しています。

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