(※写真はイメージです/PIXTA)

「リタイア後は静かな温泉地で……」――老後の暮らしにあこがれ、格安のリゾートマンションを購入するシニアは少なくありません。確かに“温泉付き”“自然の中”“安い価格”という条件は魅力的ですが、それだけで“安心”とは限りません。維持費の負担や需要の低迷など、思いもよらぬ落とし穴が待っていることもあるのです。

“別荘”の現実、固定資産税や処分も負担に

もうひとつ、高田さんを悩ませたのは「別荘扱いゆえの負担」です。

 

湯沢のリゾートマンションの多くは「別荘地」として建築されており、住宅ローン減税や居住者向けの行政支援の対象外となるケースもあります。また、使用実態が薄い空室でも、管理費・固定資産税は発生します。

 

「住民票を移さなければ“移住”とは見なされず、地域の福祉サービスなども受けづらい。体調が悪くなっても、近くに頼れる人もいませんでした」

 

そして1年後、高田さんは都内のUR団地に空きが出たのを機に、湯沢の物件を手放すことを決意。売却先は見つからず、最終的には「無償譲渡」というかたちで処分したといいます。

「安い」に潜む落とし穴、地方移住の前に考えたいこと

高田さんのように、「老後の住まい=安さ最優先」で選んでしまうと、生活コスト全体やインフラ、医療・交通・買い物環境など、暮らしに不可欠な要素とのミスマッチが生じる恐れがあります。

 

国土交通省の調査でも、リゾートマンションの空室率や管理放棄の問題は年々深刻化しており、なかには倒壊寸前の物件や、管理組合が機能していない事例も報告されています。

 

また、湯沢町のように固定資産税が都市部より割高になる地域や、「温泉権」付き物件に特有のランニングコストが想像以上に高額となるケースもあるため、事前に地域・物件・管理形態などをよく調べることが重要です。

「もう一度、安心できる生活を」

現在は都内のUR団地に入居し、家賃5万5,000円で落ち着いた生活を送っている高田さん。周囲には同世代の住民も多く、買い物環境や通院も便利になったといいます。

 

「安く買えたからって、そこが“安心して老後を過ごせる場所”とは限らない。身をもって学びました」

 

「温泉付き」「リゾート地に自由に暮らせる」「駅チカで安い価格」――これらは確かに魅力ですが、物件購入後の維持費、人口減と住民減、生活環境の実態、高齢になってからの利便性など、見落としやすい大きなリスクがあります。

 

リゾートマンションや別荘を検討するなら、購入時のコストだけでなく、維持費の長期試算、将来のライフスタイルの変化、売却の難しさなども含めた“トータルコスト”で判断する必要があります。

 

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