(※写真はイメージです/PIXTA)

大学無償化や奨学金制度が整備されつつあるとはいえ、私立大学への進学にはいまだに多額の費用がかかります。子どもに「いい教育環境を」と願う親心から、学費や仕送りを惜しまない家庭も少なくありませんが、老後資金とのバランスを見誤ると、退職間際になって“現実”に直面することもあります。

「退職金でどうにかなる」…は甘い見通し?

「いざとなれば退職金がある」と考えていた森田さん。しかし勤務先の規定では退職金は税引き後1,200万円程度。住宅ローンの残債が500万円以上残っており、それを差し引くと「とても老後の生活を支えるだけの金額ではない」と打ちのめされました。

 

総務省『家計調査年報(2024年)』によれば、65歳以上の夫婦のみの無職世帯において、1ヵ月あたりの実収入は約25.2万円、可処分所得は約22.2万円。一方で、消費支出は約25.6万円にのぼり、毎月約3.4万円の赤字が発生しています。

 

「妻の年金は月6万円ほど、私もせいぜい月13〜14万円。退職後の家計を考えると、どこを削っても赤字です」

 

では、その多額の教育費が報われたかといえば――。

 

「長男も長女も会社勤めを始めたものの、まだこれからという段階。次女はまだ学生で、アルバイトをしながら将来を考えているようです。親として多少のもどかしさはありますが、それぞれのペースを見守っていこうと思っています」

 

森田さんは、教育にお金をかけることの意義を否定するつもりはありません。ただ、「教育費のピークを過ぎた後に老後が来る」という現実をもっと早く直視すべきだったと振り返ります。

 

「子どもの将来に投資するのは親として当然ですが、“自分たちの未来”をないがしろにしてはいけなかった。これからは、ようやく夫婦の生活を立て直す番だと思っています」

 

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