「家が欲しい」妻の懇願、実父のひと言が後押しに
佐伯修平さん(仮名・当時38歳)は、地方都市の製造業に勤める会社員です。年収は590万円。妻の麻衣さん(仮名・当時32歳)はパート勤務で年収100万円ほど、小学3年の長女と保育園に通う次男の子育てに追われています。
家族が暮らす2LDKの賃貸マンションの家賃は13万円。駅まで徒歩10分で生活に大きな不便はありません。しかし、ここ最近、麻衣さんの口癖のようになってきた言葉がありました。
「ねぇ、そろそろ本気で家を持たない? もう待ってられる年齢じゃないよ」
修平さんは40代も見えてきた年齢。35年ローンを組むと、繰り上げ返済をしない限り、70代を超えても返済が続く計算です。持ち家に縛られること、ローンを背負う重さが気がかりでした。
それでも、ついに決断のきっかけとなったのは、実家を訪れたときの父のひと言でした。
「一生家は買わないのか? 俺の時代は家を持ってこそ一人前だったが、今は違うのか」
「お義父さん、私は家を買った方がいいと思っています! 家賃を払っても自分たちのものにならないですから。私も今は扶養の中で働いていますが、フルタイムで正社員を探すつもりです」
麻衣さんは、ここぞとばかりに身を乗り出します。実父と妻の熱意に押され、修平さんには「買わない」という選択肢はなくなりました。実際、自分と同じくらいの収入と思われる友人たちも次々に家を購入しており、「心配しすぎる必要はないか」と考えたといいます。
収入増を前提に、ついに新築マンション購入
修平さんの同意を得ると、麻衣さんの行動はスピーディでした。売り出したばかりの 4,900万円の新築マンション に申し込み、購入を決定。中心駅から数駅、徒歩10分以内で、明るいリビング、大きめの対面キッチン、広いバルコニーが魅力です。
当時の貯蓄は800万円。このうち 300万円を頭金に充当、父からの援助200万円を加え、住宅ローンは約4,400万円。金利0.75%・変動金利・35年返済で計算すると、月々の返済額は 約12万8,000円。管理費・修繕積立金・駐車場代を合わせると、毎月の住居費は 約16万5,000円になりました。
賃貸より負担は増えましたが、麻衣さんは「収入を増やせばいいし、節約も頑張ろう」と前向きでした。ところが、ローン返済が始まってわずか4年。夫婦の予想とは違う現実が訪れます。
