(※写真はイメージです/PIXTA)

内閣府『高齢者の生活と意識に関する国際比較調査(令和2年度)』によると、日本人が「今後は収入の伴う仕事をしたくない」と考える理由として、「ゆっくりとした生活がしたいから」と答えた人の割合が最も高く、60~64歳で45.5%、65~69歳では52.3%にのぼっています。一方、長年家事や家計管理を担ってきた配偶者側は、「ようやく自分の負担が軽く…」と考えるケースも少なくありません。こうした夫婦間の意識のギャップが、退職直後から“見えない亀裂”として表面化するケースもあります。

夫婦で迎える“新しい生活”の再設計

現在、和夫さんは週2日ほど、近隣の学習塾で軽作業のアルバイトをしているそうです。久美さんも趣味の手芸サークルに通うなど、互いに“自分の時間”と“家の時間”を持ち寄りながら、生活の再構築が始まっています。

 

定年退職を迎えると、これまで仕事中心だった生活が一変し、自宅で過ごす時間が長くなります。その変化によって、家事の分担や食事の準備、1日の過ごし方など、夫婦のあいだで新たなルールや役割を話し合う必要が出てくるのです。退職は“自由な時間が増える”と同時に、“家庭の中での立場や関わり方が問われる”転機でもあります。

 

「最初からうまくいくなんて思っていませんでした。でも、何も言わなければ私はずっと不満を抱えたままだったと思います。小さなひと言が、夫婦の新しい関係の“スタート”になった気がしますね」

 

“自由な老後”の裏に潜む「家庭内の再調整」。そこには、“リタイアした夫”と“長年支えてきた妻”の新しいかたちが、少しずつ築かれていくのかもしれません。

 

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