「やっと好きに暮らせると思ったのに…」
東京都在住の佐藤雅之さん(69歳・仮名)は、都内のメーカーに勤めた元会社員。年収はピーク時で950万円、退職金は約2,000万円、企業型DCと貯金を合わせて3,000万円を老後資金として確保していました。
「住宅ローンも完済して、年金もある。あとは夫婦で穏やかに暮らすだけだと思っていました。ところが…蓋を開けてみたら、毎月の支出が思ったより減らないんです」
原因は、妻の「自由な買い物」だったといいます。
妻・百合子さん(65歳・仮名)は、退職後に時間ができたことで趣味の教室に通い始め、海外旅行や高級バッグの購入も増えていきました。
「一度だけと思って出したハワイ旅行も、気づけば“毎年恒例”に。百貨店の外商を使って、季節ごとに新作バッグを買っていたことも最近知りました」
「あなたの年収で足りなかったことなんてなかったじゃない」「貯金もあるんだからいいでしょ」と笑って言う妻に、怒りよりも虚しさが募ったといいます。
年金月額は夫婦合計で約23万円。そこに生活費・趣味費・旅行費・外食費が重なり、年間支出は約450万円に。結果、定年からわずか6年で貯金は1,500万円を切りました。
「年金だけじゃ赤字なんです。医療費も増えてきたし、自宅の修繕にもお金がかかる。退職金を“使い切る”スピードに、ようやく焦りを感じました」
実際、総務省『家計調査(2024年)』によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の平均支出は月25.6万円で、可処分所得22.2万円を下回っています。つまり月3.4万円の赤字を、貯蓄で補填している世帯が多いことがわかります。
佐藤さんは、老後生活が「もっと質素になる」と思い込んでいたと語ります。
「旅行に行くのは年1回程度、外食も月に数回くらいだと思っていた。でも妻にとっては、“時間ができた=人生を取り戻すチャンス”だったようです。現役時代の我慢が一気に爆発したんでしょうね」
一方で、配偶者の浪費に悩む高齢者の声も年々増えています。国民生活センターによれば、高齢世代の消費トラブル相談は近年も高水準で推移しており、旅行費や通販、エステ・美容などが上位を占めています。
