(※写真はイメージです/PIXTA)

「老後は自然豊かな場所で、静かに過ごしたい」。そう考える高齢者は少なくありません。特に、都市部の物価や住宅費の高騰を背景に、「年金でも暮らせる地方暮らし」を夢見る人が増加しています。しかし、こうした移住が必ずしも成功するとは限りません。むしろ、高齢での生活環境の激変が、心身の不調や家計の破綻を引き起こすこともあります。

「空き家予備軍」としてのリスク

息子の弘樹さんは、すぐに両親を自宅に引き取ることを決断しました。しかし残された家は、買い手も借り手も見つからず、放置されるまま。こうした“高齢者移住の末路”は、空き家問題の温床にもなり得ます。

 

総務省『令和5年 住宅・土地統計調査』によれば、日本の空き家率は13.8%。過去最多を更新しています。

 

特に郊外や中山間地域では「相続放棄された実家」や「高齢者が手放せなかった一軒家」が放置されるケースが増えており、空き家対策特措法による固定資産税の優遇措置解除リスクも懸念されます。

 

「もっと早く相談してくれればよかったのに」

 

弘樹さんは、移住そのものを否定しているわけではありません。ただ、親が老いていく中で、医療・交通・修繕・見守り・売却の見通しなど、現実的な視点を持たずに“夢”に飛びついてしまったことを悔やんでいます。

 

生活費の安さや家の広さに惹かれて地方移住を選んだものの、「年を取ったときに本当に困らないか」を見極めるには、専門家や家族との事前の相談が不可欠です。

 

庭付き一軒家という「資産」が、誰にも継がれず、誰にも売れず、持ち主にとっても重荷となる「負の遺産」になってしまうケースは、今後さらに増えていくと見られます。

 

「安く暮らせる場所」ではなく、「自分が最期まで安心して暮らせる場所」かどうか。高齢期の住まい選びには、慎重すぎるくらいの備えが必要なのかもしれません。

 

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