「母の生活は“ギリギリ”だと思っていました」通帳を開くと…
「幸せに暮らしてね」
そう書かれたメモが、母の仏壇の引き出しに入っていました。
東京都下に住む48歳の会社員・亜美さん(仮名)は、母・文江さん(享年75歳)の遺品整理をきっかけに、10年以上ぶりに実家のアパートを訪れました。文江さんは長年一人暮らしで、月10万円の国民年金で細々と暮らしていたとされ、近隣住民からは「少し変わった人」と言われていたそうです。
「連絡は年に一度、年賀状のやりとりだけ。母の生活は“ギリギリ”だと思っていました」
アパートの部屋は年季の入った家電と家具、そして大量の古い雑誌や新聞で埋め尽くされていました。
遺品整理は、想像以上に体力と時間を要しました。
「とにかく物が多くて…台所なんて、開かずの扉ばかりでした」
その中で、年季の入った食器棚をどかしたとき、ホコリにまみれた封筒が床に落ちてきたそうです。中には、銀行の通帳が複数冊。どれも古いものでしたが、最も新しい通帳を開いた瞬間、亜美さんは目を疑いました。
「最終残高が“5,132万円”。そのときは意味がわからず、思わず通帳を持ったまま床に座り込んでしまいました」
文江さんは、若い頃に夫と離婚し、女手一つで亜美さんを育てました。生活保護は受けず、パートと内職を掛け持ちして生計を立てていたといいます。
「節約家、というより“極端にお金を使わない人”だったと思います」
冷暖房を極力使わず、服も何年も同じものを着続け、テレビも地上波しか見ない。その生活を見て、「母は貧しい」と思い込んでいた亜美さん。しかし実際には、文江さんはパート時代からコツコツと現金をため、定期預金を複数口座に分けて保有していたのです。
