11月物価上昇DIは82.1に低下…政府対策への期待で3ヵ月ぶり下落
消費者マインドアンケート調査は5段階の評価の回答なので、景気ウォッチャー調査と同じ手法で物価上昇判断DIを作ることができます。物価上昇判断DIは、調査開始の16年9月から22年1月までは60台・70台で安定推移していました。しかし、ロシアがウクライナを侵攻した月の22年2月調査以降、物価上昇判断DIは80台・90台で、物価が上昇するという見方が強い状況が継続しています。
22年10月に90.4をつけたあと、80台後半の高水準での推移が続き、23年は6月に90.7をつけました。そこから振幅を伴いつつ24年9月の80.3まで一旦低下しましたが、反転上昇傾向になり、25年2月に90.2と20ヵ月ぶりの90台を記録しました。
25年3月以降11月までは80台で推移しています。4月87.9から、5月87.0、6月85.8と2ヵ月連続低下しましたが、7月は87.4へと上昇、8月は84.8へ低下、9月85.7、10月87.0へと2ヵ月連続で上昇。そののち、11月は82.1に再び低下しました。依然80台ながら24年9月の80.3以来、14ヵ月ぶりの低水準です。
なお、24年9月調査の期間は8月21日~9月20日でした。この時期は、南海トラフ地震への備えからコメの購入が急増した、いわゆる「令和の米騒動」と重なります。まさに、コメ価格が上昇し始めるきっかけとなったタイミングでした。
25年11月調査では、政府の物価対策などへの期待もあり、物価上昇判断にやや落ち着きがみられるようになったと思われます。
回答の内訳比率をみると、25年11月は「上昇する」が44.4%で、10月の55.0%から10.6ポイントと大きく低下しました。40%台は24年10月の46.1%以来、水準の低さは24年9月の42.6%以来になります。25年4~5月は60%台、6~10月は50%台でした。
11月の暮らし向きDIは37.7へ改善…9月の低下から再び持ち直す動き
25年5月の暮らし向き判断DIは、28.0と低水準ですが、25.4だった4月から2.6ポイント、3ヵ月ぶりに上昇しました。6月30.4、7月33.6、8月は38.2と3ヵ月連続上昇しており、24年12月の39.0以来の水準です。
しかし9月は32.0と、5ヵ月ぶりに低下しました。ただし、20台になることはなく、3月以降の30台は維持しています。10月は35.0と、3.0ポイント上昇ののち、25年11月は37.7へと2.7ポイント上昇。25年8月以来の水準に戻りました。
高市新政権の物価対策に期待感。物価上昇判断が落ち着き、暮らし向きDIは改善
消費者マインドアンケート調査の「暮らし向き判断DI」と「物価上昇判断DI」の相関係数をみていきます。
16年9月から21年8月までの最初の5年間は、0.01と無相関でした。しかし、21年9月から25年11月までの最近の4年3ヵ月間では▲0.677のマイナスで逆相関になっています。24年12月から25年11月までの1年間は、物価上昇判断DIが84以上の高水準に上昇し、暮らし向き判断DIは20台・30台の低水準である状況に変わりなく、物価見通し判断が暮らし向き判断の足枷になる状況が継続しています。
ただし、このところの相関係数の絶対値が縮小気味だったので、21年9月から25年11月までを2つの区間にわけてそれぞれの相関係数を求めました。21年9月から24年8月までの3年間では▲0.738と、物価見通し判断が高くなることで、暮らし向き判断が悪化する傾向が強かったことがわかります。一方、その後の24年9月から25年10月までの1年2ヵ月間の相関係数を求めると、▲0.473と相関が弱くなっていました。
しかし、24年9月から25年11月までの1年3ヵ月間の相関係数を求めると、▲0.501で相関がやや強くなっています。25年11月は、政府の物価対策などへの期待から、物価上昇判断にやや落ち着きがみられ、暮らし向き判断がやや改善したように思われます。
高市総理は10月21日の初閣議で、「総合経済対策の策定についての内閣総理大臣指示」を出しました。食料品を中心とした“物価高が当面の景気下押しリスク”と位置付け、総合経済対策の柱の第一として「生活の安全保障・物価高への対応」を掲げています。
具体的には、足元の物価高に対し、「重点支援地方交付金により、地域のニーズにきめ細かく対応します。厳冬期の電気・ガス代を支援します。国・自治体と民間の請負契約単価を物価上昇等を踏まえて適切に見直します。当分の間税率の廃止に向けた政党間協議を進め、制度実施までは燃料油激変緩和補助金の基金残高を活用します。『給付付き』税額控除の検討に着手します」と指示しました。
「暫定税率廃止」へ向け補助金拡充。ガソリン価格は低下基調、年末にはさらなる値下げも?
11月消費者マインドアンケート調査の回答期限は11月20日で、レギュラーガソリン価格の低下が反映されたと思われます。11月17日時点のレギュラーガソリンの全国平均価格は、169.8円/Lで前週より3.7円下がりました。160円台は2023年6月12日の169.3/L以来約2年半ぶりの水準です。前年比は▲2.9%。
ガソリン税の旧暫定税率が年末に廃止されるのに向けて、石油元売り会社へのガソリン補助金を11月13日に10円から15円に増やした効果が出ました。政府は今後、ガソリンへの補助金を11月27日には20円、12月11日には旧暫定税率と同じ25.1円にする予定です。
コメ価格、3週ぶり下落も「4,000円台」の高止まり続く。経済対策で「おこめ券」配布
11月16日までの1週間で、スーパーで販売されたコメの平均価格は4,260円/5kg、前週より56円安くなりました。値下がりは3週ぶりですが、前の週には最高値を更新していて4,000円台で高止まりしたままです。
政府は11月21日、新たな経済対策を決定しました。自治体向けの交付金の拡充などが盛り込まれていて、鈴木農林水産大臣は「おこめ券」による対応を期待しているようです。身近な商品価格の高止まりが続いていますが、どんどん物価が上昇するという局面からは変化しているように感じます。
※なお、本投稿は情報提供を目的としており、金融取引などを提案するものではありません。
宅森 昭吉(景気探検家・エコノミスト)
三井銀行で東京支店勤務後エコノミスト業務。さくら証券発足時にチーフエコノミスト。さくら投信投資顧問、三井住友アセットマネジメント、三井住友DSアセットマネジメントでもチーフエコノミスト。23年4月からフリー。景気探検家として活動。現在、ESPフォーキャスト調査委員会委員等。
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