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突然の別れ、崩れた幻想
ある日の夕方。涼介さんはいつになく真剣な表情でこう切り出しました。
「……俺、離婚したい」
理由は、しのぶさんの想像を絶するものでした。 なんと涼介さんは、自分のバーの常連だった45歳の女性との間に、子どもを授かっていたのです。
「産むなんて、絶対に許さないわよ!」「あなたの収入で子どもなんて育てられないわよ!」しのぶさんは叫びました。感情を抑えることができず、部屋の中のものを彼に投げつけ、泣きながら何度も訴えました。
その後もしばらくのあいだ、しのぶさんは涼介さんと相手の女性に対し攻撃的な言葉を浴びせ、営業中にも関わらず店に通い詰めるなど、荒れた日々が続きました。常連客になだめられ、最終的には離婚調停へ。調停では、「涼介さんがしのぶさんへ和解金として300万円を支払う」という内容で離婚が成立しました。
しかし、涼介さんは経営難、これから生計をともにするであろう相手女性も派遣社員で支払い能力は乏しく、実際に支払われるかは不透明なままです。あとに残されたのは、わずかな年金と細々続く自宅サロン、そして、四度目の離婚歴でした。
実の子どもたちはもともと、奔放な母と理解がありましたが、この騒動を機に距離ができてしまい、疎遠に。自宅のリビングに、たった一人。ふと、しのぶさんの口から言葉が漏れました。
「お願い、助けて……」
しかし、その声に応えてくれる人はもう誰もいません。しのぶさんはいま、深い不安と孤独のなかで日々を送っています。
自由に生きた代償
恋愛や離婚を何度繰り返しても、それ自体に問題はなく、自由に生きる人生は個人の価値観の選択でしょう。ただし、それを選ぶには、「自分の生活を自分で守る力」が必要です。
しのぶさんはずっと個人事業主として働いてきましたが、老後の年金は国民年金の月6万円のみ。定年退職がないとはいえ、いずれは働けなくなる日が来ることはわかっていたはずです。若いころから好きな仕事をしてきましたが、常に誰かに生活を支えてもらうことに慣れ、自立して生活する努力を後回しにしてきました。
本業の稼ぎが少ないなら副業で収入を増やす、あるいは、個人事業主が使える「小規模企業共済」や「国民年金基金」などの制度を利用して、税金もお得に老後資金を作ることもできたはずです。また、現役で働けるうちは年金を受け取らず、75歳まで繰下げ受給をすれば、受給額を最大84%増やすことも可能でした。そうした対策をしていれば、少なくとも経済的な面では、もっと心にゆとりのある生活を送れたことでしょう。
