(※写真はイメージです/PIXTA)

人は人生の終盤に差し掛かったとき、自身の生きた証であり、残された家族への愛の形でもある「遺産」の行方について深く考えるものです。特に、現代社会では「おひとりさま」や家族関係が複雑化した世帯が増え、遺産の分け方一つで親族間に決定的な亀裂が入るケースも少なくありません。自分の財産を誰に、どれだけ渡すのか。その意思を明確にするために作成されるのが「遺言書」です。しかし、その遺言書に込められる想いは、必ずしも「感謝」や「愛情」だけではない場合があります。

増加する「争続」の背景

節子さんのようなケースは、決して珍しいことではありません。

 

裁判所が公表している『司法統計』(令和5年)によると、遺産分割事件のうち、遺産額が5,000万円以下のケースが約8割を占めています。裏を返せば、1億円を超えるような高額な遺産は、親族間の対立が激化しやすい「争続」に発展するリスクが非常に高いことを示しています。

 

特に、節子さんのように配偶者や他の子が既に亡くなっている場合、相続人は長男Aさんのみとなります。長男Aさんが唯一の相続人である場合、法定相続分では遺産の100%を受け取ることになります。

 

節子さんが最も恐れたのは、長男Aさんが自分より先に亡くなることです。 この場合、遺産はBさんと孫に渡ってしまいます。

 

弁護士は、節子さんの強い意思を実現するため、遺言に「予備的遺言」や「負担付遺贈」といった特殊な条項を盛り込むことを提案しました。

 

予備的遺言とは、遺言で指定した受遺者(長男Aさん)が、遺言者(節子さん)より先に亡くなっていた場合に備え、「その場合は、財産をXX(別の人物)に渡す」とあらかじめ定めておくことです。

 

節子さんは、長男Aさんが自分より先に亡くなった場合は、「財産はすべて慈善団体に寄付する」という旨を予備的遺言として加えました。

 

これにより、長男の妻Bさんが節子さんの財産を相続する可能性は、法的にゼロとなったのです。節子さんは、最期の手紙となる遺言書を公正証書として作成し終えた後、深く安堵の息を漏らしたと言います。

 

相続における法律は、原則として「遺言書」の意思を最優先します。家族愛や感謝の気持ちを伝えるための遺言書が、ときにはこのように、「静かなる復讐心」を遂行するための最期の武器となることもあるのです。

 

遺言書は、法律文書であると同時に、亡くなった方からの最期のメッセージです。節子さんのケースは、複雑化した現代の家族関係と、遺産に込められた深い感情を象徴しています。

 

遺産相続の準備は、単なる財産の分割ではなく、「誰に、何を、なぜ残すのか」という、人生の哲学を問い直す機会なのかもしれません。

 

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