(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢の親の生活やお金の管理について、「まだ元気だから」「口を出すと嫌がられそう」と放置してしまう家庭も少なくありません。しかし、認知症の進行や詐欺被害、通帳・現金の紛失などにより、気づいたときには「手遅れ」になっていたというケースも存在します。特に年金収入だけで暮らす高齢者にとって、生活資金の消失は死活問題にもなり得ます。

父を責める気はないが…

家じゅうを探しても、通帳や印鑑は見つかりませんでした。

 

「本人に尋ねても“覚えていない”“引き出したっけ?”と話が前後して、だんだん会話が成立しなくなってきたんです」

 

医師の診察を受けた結果、軽度の認知症と診断されました。医師からは、「近年になって物忘れや金銭管理の能力が低下していた可能性が高い」と言われたそうです。

 

綾乃さんは、銀行の成年後見制度も視野に入れつつ、今後の父の生活について兄姉と話し合うことにしました。

 

「もっと早く、“通帳を見せて”って言えばよかった。父を責める気はないけど…ひとりで抱え込ませてしまったことが悔しいです」

 

実際、成年後見制度の利用件数は2024年末時点で約25.4万件にのぼっていますが、手続きの煩雑さや家庭内の抵抗感から、利用をためらうケースも依然として多いのが実情です。

 

「ちゃんと暮らせているから大丈夫」という言葉だけを信じて、何年もお金のことを話題にしてこなかった——。

 

綾乃さんは今、父と一緒に生活を見直し、ノートを書き始めています。口座情報、保険、通帳の保管場所、交友関係……小さなことでも、いざというとき役に立つ情報ばかりです。

 

「金庫の中に何もないと気づいた瞬間、怖いというか、胸がぎゅっと締めつけられたんです」

 

そう話す綾乃さんは、これからは「お金の話も、家族の大事な会話のひとつ」として、避けずに向き合っていこうと決めたそうです。

 

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