「自分たちだけは大丈夫」は通用しない
高齢者世帯では、医療費や介護費用に対する不安が根強く存在しています。内閣府『令和6年版 高齢社会白書』によれば、60歳以上の人が老後に備えて必要だと考えることとして、「健康に関する備え(健康の維持・増進、介護予防、保険、病気やけがの治療等)」を挙げた人が全体の8割を超え、他の項目を大きく上回りました。
さらに、介護保険サービスにかかる1割負担の費用でも、回数や種類によっては月1万円を超えることがあり、想定外の“継続的支出”につながりやすいのが現実です。
「今までの生活なら、年金だけで十分やっていけたんですよ。でも一度崩れると、元に戻すのは難しい」
大川さんは今、地域の生活相談窓口で家計の見直しや支援制度の活用について相談を始めています。
「“贅沢しなければ年金で暮らせる”という考えは甘かったのかもしれません。もっと早く、こうなるリスクを考えておくべきでした」
老後における家計破綻は、決して“浪費”によるものばかりではありません。真面目で堅実な暮らしの中にも、想定外のリスクが潜んでいます。
必要なのは、「何があっても家計を立て直せる柔軟性」と「いざというとき相談できる窓口の確保」。つつましく生きることと、何かあったときに立ち止まれる“余白”の両方を持つことが、長い老後には必要なのかもしれません。
