中国も西側諸国との対立が強まり「中露同盟」成立の懸念…ロシアにとって歓迎の〈米中新冷戦〉

中国も西側諸国との対立が強まり「中露同盟」成立の懸念…ロシアにとって歓迎の〈米中新冷戦〉
(※写真はイメージです/PIXTA)

これまでの国際秩序が揺らぐ中、日本と国境を接するロシアと中国の連携が強化されると、日本への脅威が一層強まります。両国を結びつけるのは、米国への対抗と貿易の実利。ウクライナ侵攻で西側諸国から制裁を受ける資源大国ロシアと、製造大国中国は、互いの弱点を完全に補い合っています。三尾幸吉郎氏の著書『図解中国が変えた世界ハンドブック 9主要国の国益と対中関係から考える、米中新冷戦回避への道』よりデータから読み解く中露の経済的な結びつきと、日本への影響を解説します。

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中国は必ずしも望んでいない“中露同盟”

ロシアは欧米型民主主義の国だが、米国とは軍事対立関係にあり、米中新冷戦に突入した場合、米国陣営に与する可能性は低い。しかも中露同盟が成立すれば、軍事力・経済力で米国と並ぶ力を持てるため、中国陣営に与する可能性が高い。

 

日本にとってロシアは中国陣営の主力メンバー候補で、橋渡し役を試みる場合にもロシアが協力してくれるとは到底思えない。

 

日本としては中国がロシアとの同盟に走らぬよう、気をつけるしかなさそう。

 

ロシアは欧米型民主主義の国であり、しかも現在(2024年)はプーチン大統領が率いる統一ロシアが与党、またロシア連邦共産党は野党なので、「中国の特色ある社会主義」とは本来的に相容れないはずです。

 

しかしプーチン大統領は、自由よりも統制を重視する政権運営をしているので、人民民主独裁を憲法で定める中国と通じ合い、政治面では相互に尊重する関係にあります。

 

ただし、ロシアは選挙で為政者を選択する政治体制なので、プーチン大統領が選挙で敗れれば一気に中国との関係が悪化する可能性もあります。しかし世論が親中なので、反中政権が誕生する可能性はそれほど高くありません。

 

そして、米国とはウクライナなど東欧、またオホーツク海で覇権を争う軍事対立関係にあります。

 

経済面でもロシアにとって中国は重要な国です。輸出先としては第1位、輸入元としても第1位の貿易相手国であり、投資面においても中国の対ロシア投資はロシアGDP比0.8%の規模があります。

 

他方、米国も輸出先としては第9位、輸入元としては第3位の貿易相手国で、投資面においても中国に比肩する投資元です。ただし、貿易面ではEU諸国(ドイツなど)やCIS諸国(ベラルーシ、カザフスタンなど)、投資面ではEU諸国(フランス、ドイツ、イタリアなど)の存在感の方が大きいので、米露関係は相対的に希薄と言えます。さらにウクライナ侵攻に伴う米の制裁で、一層関係が薄まりました。

 

そしてロシアは米中新冷戦を望む数少ない国の一つと言えるでしょう。中露同盟が成立すれば、軍事力・経済力で米国と比肩しうる力を持つこととなり、プーチン大統領が目指す、ロシア帝国復活とも言うべき、東西冷戦終結前の勢力図に回帰できる可能性があるからです。

 

しかし、中国はロシアとの同盟を望まないでしょう。かつてソ連との同盟では痛い目にあってきましたし、ロシアとの関係以上に西洋諸国(含む日本や韓国)との関係が重要だからです。

 

さらに中国が目指す社会主義近代化強国を実現する上では、自国の科学者が西洋諸国や日韓の科学者と切磋琢磨できる環境が必要不可欠だからでもあります。

 

日本にとってロシアは協力できる国とは言えないでしょう。日本が米国陣営に与する場合は、それと敵対する中国陣営の主力メンバーとなりそうですし、橋渡し役を試みる場合にも、ロシアが協力してくれるとは到底思えないからです。

 

日本としては、中国がロシアとの同盟に走らぬよう、気をつけるしかなさそうです。

 

出典:筆者作成
[図表20]米中ロシアの関係 出典:筆者作成

 

 

三尾 幸吉郎

ニッセイ基礎研究所 客員研究員

世界経済アナリスト

 

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※本連載は、三尾幸吉郎氏の著書『図解中国が変えた世界ハンドブック 9主要国の国益と対中関係から考える、米中新冷戦回避への道』(白桃書房)より一部を抜粋・再編集したものです。

図解中国が変えた世界ハンドブック 9主要国の国益と対中関係から考える、米中新冷戦回避への道

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