外から見れば「資産家の奥様」…でも財布の中は
「誰にも相談できないの。恥ずかしくて…」
そう打ち明けたのは、都内の閑静な住宅街にある敷地90坪の一軒家で一人暮らしを続ける、76歳の滝本幸子さん(仮名)。夫を10年前に亡くして以降、息子夫婦とは疎遠になり、長年暮らした自宅で年金月18万円の収入で細々と生活しているといいます。
けれど、外から見れば彼女の暮らしは実に「優雅」に映るのです。
百貨店の外商員が自宅を訪れ、毎月のように婦人服や和菓子などのパンフレットを持参。幸子さんもつい見栄を張って、「今月も買っておくわね」と5万円、6万円と商品を購入してしまう――そんなやりとりが続いていました。
「一度だけ“もう今月は厳しい”って言ったら、なんだか申し訳なくなって…。それ以来、少しでも買わないと気まずくて」
幸子さんのように、百貨店の外商との長年の関係性が「断りにくさ」につながり、支出がかさむケースも少なくありません。
外からは“付き合いの長いお得意様”に見えても、実際は「財布に千円しかない日もある」という滝本さん。家が広くて片付けも追いつかず、空調代を節約して夏は扇風機、冬は湯たんぽで凌いでいるといいます。
滝本さんの収入は、国民年金と遺族年金を合わせた月18万円弱。夫の遺産は10年前にほぼ使い切り、今は貯金も底をついている状態です。
では、自宅を売って資金に換えるという選択肢はないのでしょうか?
「でも、この家を出たら、どこに行けばいいのか分からなくて。賃貸も高いし、住み慣れた場所を離れたくないの」
確かに、都心で築年数が古くても土地が広ければ「資産」としては高く評価される一方で、売却やリースバックに踏み切れない高齢者も多くいます。加えて、高齢者単身世帯への賃貸契約を渋る大家も存在し、「住み替え」が現実的でないこともあります。
