〈年金30万円・貯金4000万円〉「理想の住まい」だった
東京都在住の飯田孝彦さん(仮名・78歳)は、大学病院で勤務していた元内科医。妻の芳子さん(76歳)も、長年個人医院の看護師として働いてきた医療従事者夫婦です。
「子どもたちも独立していたし、“まだ元気なうちに、終の棲家を見つけよう”と、夫婦で話し合ったんです」と話すのは、芳子さん。
2人は、首都圏近郊にある入居一時金不要の高級ホームを内見。個室は30㎡超で、食事付き・24時間介護体制・医療機関併設。費用は月額35万円強と高額でしたが、夫婦あわせて年金月30万円超、預貯金も4,000万円以上あったため、「資金的には問題ない」と判断し、即決したといいます。
「周りも“先生”“奥様”という感じの人が多くて、初めは本当に理想的な暮らしだったんです」(芳子さん)
しかし、入居後2ヵ月ほどで、空気は一変します。
「共用スペースで談笑していると、ある男性入居者から『声がうるさい』と何度も注意されるようになって…」。それだけならまだしも、エレベーターで無言の圧をかけられたり、朝の挨拶を無視されたりするようになり、他の入居者も徐々に距離をとるようになったといいます。
ホーム側に相談するも、「入居者同士の問題は当事者間で解決を」と消極的な対応だったことも、夫婦を苦しめました。
「精神的にしんどくなってしまって…。これ以上ここにいたら、気が滅入ってしまうと思った」(孝彦さん)
入居からわずか半年で、2人は退去を決意。現在は、長男の勧めで都内の分譲マンションに仮住まいしながら、再び新たな終の棲家を探しているといいます。
