体力のあるうちに片付けたい…換金しながら「生前整理」を開始
清水良子さん(70歳)は夫の隆さん(73歳)と2人暮らし。年金収入は2人で月21万円。住宅ローンは完済しているものの、貯金を切り崩ながらの生活。隆さんが退職した時には約3,000万円の貯金がありましたが、その額も2,200万円程度に減少しています。
娘2人は結婚して他県に住んでおり、使わなくなった部屋は夫婦の倉庫代わり。何がどこにあるのかわからない状態です。
「私たちも、あと何年健康でいれるかわからない。娘達に迷惑をかけないためにも、体力のあるうちに片付けたい」……良子さんは何年もそう思いながら、手を付けられていない状態だったといいます。
ですが、久々に会った友人から「不用品を整理して買取業者に買い取ってもらった」と聞き、一気にやる気が湧きました。部屋が綺麗になるうえに多少のお金になれば、一石二鳥です。
こうして友人から買取業者を紹介してもらい、本格的な生前整理を始めることに。まずは、ネックレスや指輪などの宝石類。若い頃に買ったり貰ったりしたものですが、金価格が上がっていることもあり、予想をはるかに超える約50万円の値が付きました。
その査定に気を良くした良子さんは、使わないブランドものの服やバッグ、家具や電化製品など換金できるものを買取業者に売却。売れないものは廃棄するなど、家の物を整理していきました。
家の中がスッキリしていくことの気持ちよさ、いらないものがお金になるという喜び。良子さんは、この「不要な物の片付け」にすっかりはまり込んでいました。
「こんなガラクタ取っておいてどうするの?」
次に手を付けたのが夫・隆さんのもの。古い洋服などはすぐに片付き、目を付けたのが隆さんの趣味関連のものでした。若い時に好きだったというカメラは10台以上。隆さんは几帳面で、カメラやレンズはドライボックスに入れてきちんと管理しています。
また、鉄道も趣味で、模型も数点持っていました。これもまた、孫が小さい時に遊んで以来、10年以上一切箱から出している気配はなし。部品も欠けており、価値があるとは思えません。
カメラはまだしも、ボロボロの模型は価値もなく、この先使うこともないと判断した良子さん。レールなどの付属品と一緒に捨てることを考えました。
もちろん「これ、捨ててもいいわよね?」と確認することは忘れていません。しかし、隆さんからは「最悪レールは捨ててもいいけど、模型は残しておいてくれないか」と思わぬひと言。
良子さんには隆さんが模型を残したがる理由がわかりません。こんなボロボロのガラクタに何をこだわっているのだろう? その思いが、そのまま口をついて出ました。
「こんなもの、ただ取っておいてもしょうがないでしょう。押入れのスペースを取るだけで、何の意味もないじゃない。この機会に捨てましょうよ」
しかし、この一言が、隆さんを激怒させることになったのです。
