今回は、外国人労働者の「ビザ」と「在留資格」の違いについて見ていきます。※本連載は、至誠法務労務サポート代表、社会保険労務士、行政書士の井出誠氏が、経営者が外国人を雇用する際の基礎知識を解説します。

「ビザ」は入国審査時に必要なもの

外国人の入国手続や在留手続の中で、非常に混乱しやすいワードとして、「ビザ」「在留資格」があります。この違いを説明できる方は意外と少ないです。

 

世間でも、例えばニュースや新聞などでも、「就労ビザ」の更新や「留学ビザ」からの変更などのように、ビザと在留資格を同じ意味として使われている場合が多いので仕方ないかもしれませんが、厳密にいえばビザと在留資格は別物です。上記の例で言いますと、正しくは「就労の在留資格」の更新や「留学の在留資格」から「就労の在留資格」への変更ということになります。

 

まず、この言葉の整理をしていきたいと思います。

 

【ビザ(査証)】とは、日本入国のための条件として入国前に、外国にある日本の大使館や領事館において旅券に受ける査証印又はシールのことです。大使館や領事館が、その外国人の旅券をチェックし「ビザに記載された範囲で旅券所持者を日本に入国させても問題がない」という判断がされた際に、旅券に押される印又はシールのことで、外国人が日本に入国するための推薦印とも言えます。

 

我が国の入管法では、上陸申請時にビザを所持していることが、日本への上陸申請の要件となっています。日本の空港等で入国審査官が、その外国人の入国審査を行う際に有効なビザを所持していなければいけません。ビザは入国審査時に必要なものですので、入国審査官がビザを確認及び審査し、上陸許可が与えられた時点でビザは用済みとなります。この後、日本に入国後は、上陸許可時に与えられた【在留資格】が、外国人が日本に在留するうえでの根拠となるわけです。

「在留資格」は外国人が日本に在留する根拠となるもの

上陸許可時に与えられる【在留資格】とは、前回述べた通り、外国人が日本に在留するうえでの根拠となるものです。言い換えれば、外国人が日本に在留し、活動するための法的地位や身分を定めたものといえます。

 

もう少しわかり易く説明すると、「あなたは、付与された在留資格に定められた活動をするために日本に滞在してもいいですよ」と示したものです。したがって、外国人が日本在留中に行うことができる活動の範囲は、この付与された在留資格に定められた範囲内の活動のみということになります。

 

現在、入管法上の在留資格は、33種類あります。この33種類を大きく分類すると、①活動に基づく在留資格②身分及び地位に基づく在留資格ということになります。

 

このうち②の身分及び地位に基づく在留資格とは、【永住者】【日本人の配偶者等】といった在留資格のことであり、これらは活動に制限がありません。故に、例えば、単純労働などの就労も可能ということになります。

 

それに対して、①の活動に基づく在留資格には、就労が可能な在留資格と就労できない在留資格があります。

 

就労できない在留資格、例えば【留学】の在留資格で日本に在留している場合には、学業をするために日本に在留することが目的でありますので、仕事をして収入を得るような活動はできないということです(資格外活動許可を得た場合を除く)。

 

また、就労が可能な在留資格であっても、その与えられた在留資格の範囲内での活動が許されているものであり、例えば、【技術・人文知識・国際業務】の在留資格で通訳として就労している外国人に対して、単純作業などの仕事をさせるようなことは許されていませんので、注意が必要です。

本連載は書下ろしです。原稿内容は掲載時の法律に基づいて執筆されています。

※外国人就労ビザ相談センター八王子
http://www.visa802.com/

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