「1万円でも…迷ってしまって」
「今年も“あの子たち”が来るのはうれしいんだけど……お年玉、どうしようかしら」
そう話すのは、東京都在住の73歳女性・高村弘子さん(仮名)。3年前に夫を亡くし、現在はひとり暮らし。月13万円ほどの老齢年金で、都営住宅に暮らしています。
大晦日には、息子家族が3歳と10歳の子どもを連れて訪ねてくるのが恒例行事。年に一度、家がにぎやかになる時間を楽しみにしている一方で、「1人あたり1万円のお年玉」にためらいを覚えるようになったのはここ数年のことです。
「2人で2万円って、昔ならそこまで気にしなかった。でも今は、1万円があれば食費だって何日ももつから…。“今年が最後”って言い訳してしまいそうで、自分でも情けないの」
用意した赤いポチ袋を見つめながら、高村さんは「きっと渡すとは思うけど…」と苦笑いを浮かべました。
実際、年金生活者にとって「お年玉」は無視できない支出です。
総務省『家計調査年報(2024年)』によると、60歳以上の単身無職世帯の月間消費支出は平均約15万円。このうち、交際費は平均約1.65万円ですが、年末年始などの特別な時期にはこれを超える支出が集中しがちです。
「孫に会えるのが一番の楽しみ。でも、同時に“また出費が増える”って思ってしまうのは、本音としてありますね」
高村さんはそう打ち明けます。近所の友人同士でも、「お年玉いくらにする?」「去年は減らしたけど、今年はどうしよう」といった会話が飛び交うそうです。
